「物語」の「世界おいてけぼり」っぷりが気持ちいい舞城王太郎『みんな元気』

みんな元気。 (新潮文庫)

 ううー凄く感じるものはあるのに言葉にできない! 舞城さんの作品はいつもまともな感想を書けないんですけれど、決して心に残るものがなかったというわけじゃないんですよねえ。言葉をなくすという表現は言い得て妙だと思います。

 短編二つは手に負えないので、表題作だけ。時系列ばらばらで行ったり来たりに展開するので「歴史」を追おうとすると非常に混乱するんですけど、「物語」としては全く問題なく接続されているのが驚きです。

「作品世界」と、私たちの受け取る「物語」は必ずしも同じ時間の流れ方をしている必要はないんだなーというのを強く感じさせられました。これはストーリーテリングを考える上での発想として非常に興味深いのでメモ。

 これに限らず、舞城さんは一文の中で一気に時間を飛ばす・面積に対する文字密度を上げるなど読者の体感時間を操る「語り」を多用しています。それは主義とかテーマというよりむしろ職人的な「技」で、どうも批評的に光が当たりにくいような気がするこういう部分に注目した意見をもっと読みたいなーとか思いました。