『リンダリンダラバーソール』

リンダリンダラバーソール (新潮文庫)

 筋肉少女帯デビュー期のバンドブームから、その終焉までを綴ったエッセイのようなもの。エッセイのようなものに見えますけど、名目上は小説扱い。オーケンさんの個人的な描写、特に恋人のコマコさんに関するエピソードは創作要素が強そうです。逆に当時の他のバンドに触れてる部分は、滅多なホラは吹けないでしょう。

 00年代半ばにオーケンさんを知ったにわかファンとしては、筋肉少女帯のデビューの流れや当時の世情を知れて興味深かったです。当時を知っている人の場合、逆に追憶という形で楽しむことができるのでしょうか。単なる記録でなくオーケンさんの主観によって語られるので、読みごたえはあると思います。

 社会の歯車的なものに対する反動からロックに走っているのに、そこで名を上げると結果的にたくさんのお金を産むことになるので、並のサラリーマン以上に大きな役割を負ってしまうという状況が皮肉です。自由人に見えて、私たちと別のところでやはり大きなしがらみに絡められている印象を受けました。