楽しかったです『クドリャフカの順番』

クドリャフカの順番 (角川文庫)
 
 文化祭小説! 読んでいてとても楽しい、「読んでよかった」と思える小説でした。

 古典部の四者四様、古典部の一人一人がとても活き活きと描かれています。かつて経験したハレの日に郷愁を覚える人、自分の人生にはなかった賑やかなお祭りに羨望を覚える人、受け取り方は異なるかもしれませんけれど、多くの人に感銘を与えることのできる作品だと思います。

 米澤さんの作品としては珍しく、本作は「名探偵の挫折」が描かれません。今回の探偵役は事件を看破することによって自分自身が打ちのめされるということがなく、わりと気持ちよく事件を解決させます。そのワンシーンもまた文化祭というハレの日の一場面を形作っています。

 ただし探偵とは別のところ、創作や才能といった要素に視点を移して、米澤さん特有の「苦み」は本作でもたしかに描かれています。ここではほとんど残酷とも言える容赦のない現実が突きつけられていて、改めて米澤さんは”恐ろしい”作家さんだなと思うのでした。