オカルトパンクWeb小説『幻想再帰のアリュージョニスト』が地下迷宮アイドル活動編に突入して呪術ライブ合戦はじまる

 自分でも何を言っているのか分かりませんがタイトルの通りです。『幻想再帰のアリュージョニスト』は未来の日本人だった主人公が異世界転生保険という制度によって異世界のダンジョンに転生するところから始まるオカルトパンク小説で、ミームに呪力が宿る世界で与太話を駆使して荒唐無稽な戦いを繰り広げる大長編なのですが、このたび地下迷宮ライブステージを舞台にした本格的なアイドル活動編に突入して動転したので、思わず感想を書いてしまったという次第です。

 なんでこんな展開になったかというと、地下迷宮に囚われたヒロインが今ハマってるジャンルがアイドル音ゲーだったから迷宮自体がアイドル音ゲー空間になってしまってこのダンジョンを攻略するにはライブパフォーマンスでアイドルランキングの下克上を駆け抜けるしかないということらしくて*1、ていうかこの時点でもうわけが分からないのですが、何にせよバトルメインの小説でいきなりアイドル活動編が始まるトカ普通は思わないので読者はいま目玉グルグルになって泡吹きながら「やっぱり女児アニメじゃないか!」とか叫んでるところです(ちなみにアイドル活動編に入る前は主人公という格の存在掌握を巡って各勢力が過去と文脈の改竄合戦を繰り広げてました)。

 しかもこれ、息抜き回の一発ネタじゃなくてストーリー上の重要な展開として何話も続くっぽいし、大真面目に呪術ブランド戦略を練ったり、呪術師や亜人*2たちのライブパフォーマンスを戦闘シーンと同様の密度で描写したり、内容が完全に本編なんですね。いきなりアイドル編に突入して泡吹いたとは言いましたが、今までの流れを思うとこの展開って実は完全に理に適っていて、存在感の強さや人々の印象はそのままこの世界の呪力に直結するという話はこの小説の基本的な思考として繰り返し繰り返し語られてきたことなのです。だからとうぜん高位の呪術師はたいてい芸能人を兼ねてたり自分のブランドを持っていたりするし、そもそも「歌って踊れるアイドル呪術師」自体は既に重要キャラとしてとっくに登場済みで、ライブイベント会場が敵に襲撃されてパフォーマンスで呪力を高めながら戦うみたいな戦闘シーンは既に当たり前のように描写されていたのでした。なにより『幻想再帰のアリュージョニスト』って「こういう胡乱なことをやっても構わない」という懐の深い与太の基盤を2年間かけて地道に築き上げてきたような小説なので、「ああ……アリュージョニストだ……」っていう感想になってしまうんですね。あと女性の服装に関する語彙とかもやたら豊富だったし……。予想外の展開に驚きおののく一方で、「こうなったのは当然の流れ」という納得感もまたあり、その奇妙な興奮と開悟が表現しがたい感情を湧き上がらせてなんかもう笑うしかない、というのが今の私の心境です。

 アイドル活動編に入ってからのお話はこの辺で読めます。思いっきり「アイドルカツドウ」って言ってて何らかの元ネタを彷彿とさせますが、特定の作品というよりも「アイドル」「音ゲー」などのコンテンツ全般のイメージがふんだんに引喩され、それが元々の異世界オカルトパンクな世界観に落し込まれている感じですね。まだ地下迷宮がステージと化してから2話なので、この展開が数話で終わるのかもっと続くのかは分かりませんが、めちゃくちゃ面白いことになってるのでみんな読むといいよという話でした。

*1:ここで「何が囚われてるだ完全に空間掌握してるじゃねーか!」というツッコミが入ります。

*2:ところで亜人っていう言い方この世界のポリコレ的に問題ありましたっけ?