『わたしは天使の記憶』沙藤一樹

エソラvol.2 (Kodansha mook)
『エソラvol.2』掲載。伊坂幸太郎さん目当てで買っている人がやっぱり多いみたいですけど、私はこれのために購入。
何かもう、この人は優しすぎます。ありえないくらい優しいくせに、書くもの自体はものすごく残酷。佐藤友哉さんや麻耶雄嵩さん並みに救いのない世界が、乙一さんや桜庭一樹さんにも負けないくらい優しい視点から描かれています。感覚としては『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』あたりが近いかもしれません。ただ相変わらず小説としての出来は上手いとは言えませんし、リーダビリティも決して高くありません。おまけに寡作ということもあってなかなか注目される機会がなく、本当に勿体ない人だと思います。
そういえば初期の頃の彼と比べると、最近の作品の悲劇性はいくらか薄まってきたような気がします。これは徹底的に悲劇的な事件で登場人物をどん底に叩き込むよりも、その悲しみ自体を深く描写するという方向に沙藤さんの意識が傾いてきたということなのかもしれません。