麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』

 本人がやりたかったのか周りに乗せられたのか、経緯はよく分からないけど「若めの読者層向けのライトな百合ミステリを書くぞ」という明確な意思が伝わってくる麻耶雄嵩さんの百合ミステリ。謎解き要素の強い推理短編が3つ、人間がさくっと死んでは、探偵志望の高校生コンビに推理の具を提供していきます。

 キャラクターものとしても極力軽くしてある感じで、探偵の女子2人もメルカトル鮎やら木更津悠也やらのアクの強さはありません。どこかでえげつない仕掛けを突っ込んでくるかと身構えてましたけど、そんな悪趣味な不意打ちもなく、最後までしっかり雰囲気が守られていました。麻耶さんってこういうのも書けるんですね……。

 普段とはがらりと違う作風ですけど、探偵が根本的に自分の欲望に忠実だったり、犠牲者や犯人に対して妙に淡白だったりするあたりは確かに麻耶さんの小説だなと思います。ロジック担当のあおがクールで淡々としてるのは分かりますけど、賑やか担当で人懐こいももも根本的なところで薄情だし、人の人生を左右する探偵行為への屈託とかまるでなさそう(そもそも冤罪を恐れてないし……)。麻耶さんの入門書として薦めるにはクセがなくて作家性を掴みにくいですけど、淡白な麻耶さんが読みたい時は丁度いいかなと思います。