『AIR』桂遊生丸/Key

AIR (1) (カドカワコミックスAエース)
ほっぺた漫画。
漫画版『A I R』。原作がいい感じに換骨奪胎されていて、オリジナル展開はかなり大目です。アニメ版では大きく分けて三つあるシナリオを順番に並べて見せていましたけど、こちらは闇鍋よろしくかなりごちゃまぜ。観鈴さんのお話を本筋に置きつつ、他のヒロインもどんどん絡んできます。原作は基本的にずっと往人さんの一人称だったので、途中で挿入された観鈴さん視点のエピソードはとても新鮮でした。
原作の『A I R』では、プレイヤーに不快感を与えるような要素が徹底的に排除されていました。それはそれで純化された世界としてありなんですけど、桶上いたるさんの平面的な女の子の絵柄とも相まり「生身」という感覚が希薄になっていることは否めません。それに対してこの漫画版は、もうすこし踏み込んだ表現がされていた気がします。桂さんの質感ある絵柄がまず象徴的。本人視点であるぶん観鈴さんの回想は往人さんの又聞きよりも生々しいですし、彼女が往人さんをちょっと邪険に扱うシーンが描かれたりもしています。嫌な部分を見せればリアルになるというわけでもありませんけど、原作とこの漫画版でのいちばんの空気の違いは、そういった身体性*1との距離なのかもしれません。"触れたら壊れてしまいそうな儚い少女"と"ほっぺた突きたくなるような女の子"の違いと言うか。
最後の方に映画版の紹介漫画らしきものが載ってるんですけど、『AIR外伝』としか書かれてないので知らない人には何にことやら分かりません。映画版は一部設定が変更されてる部分もあるので*2、下手をすると誤解を招きかねなくて紛らわしいなーと思いました。あと美凪さんの電波度が原作より数段階レベルアップしてるんですけど一体何があったんですか。

*1:ところで身体性ってなんですか。

*2:登校拒否が云々とか