『狂乱家族日記 六さつめ』

狂乱家族日記 六さつめ (ファミ通文庫)
うー。うーん。さすがにこれは。

今回は人間VS動物。地球環境を壊す傲慢な人間と、虐げられる自然の動物たちーというよくある対立の構図です。ご多分に洩れず本作も人間と動物の融和の道を探るという方向になるんですけれど、このテーマの扱い方がちょっとあまりにも杜撰です。

まず動物が擬人化されていて、人間と同様の思考をする理屈の通じる相手として描かれています。また、人間と動物の和解という結論に至る際にも、人間が動物を食べていることとか、毛皮を剥いで服にしているとか、そういった「虐げずには人間社会が成り立たない」という事実に一切言及されていません。それどころか、動物が動物を食べているという事実すら忘れられてそうな勢い。

そういった様々な問題を全部無視して「一緒に仲良く暮らすようになりました」では、テーマとして扱った意味がないでしょう。お互いが理解しあえれば概ね解決、みたいな話になっているんですけれど、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」のレベルです。人類は肉食を放棄したんでしょうか、とか色々。

今回は異能バトル的や寄り道展開もほとんどなく、ずっとこのテーマを前面に押し出して描かれていました。味付けとしての軽いメッセージならこのくらいでも問題はないと思うんですけれど、この場合は上下巻を費やした中核として扱われている作品のキモの部分なのです。

この辺、日日日さんはやっぱりバランス悪いなあ……と思わずにはいられません。今回のについては、本人あんまり自覚してなさそうなのが何とも。最初期の作品と比べれば、これでもかなり改善されたと思いますけど。

端々のところでは、平塚雷蝶さんがいいキャラになって来ました。初登場時のラスボスの風格は一体なんだったのかという気もするんですけど、単体として見るならこれはこれで悪くありません。周りから化け物扱いされてるわりにやってることは中間管理職そのもの、世知辛く慣れない職場で必死に頑張っている健気な女の子にしか見えません。これは一体どこの萌えキャラですか。