『ZOO 2』
「血を探せ!」
乙一さんには珍しいスラップスティックっぽいお話。こういった作風にまだ慣れていないようでぎこちなさも感じますけど、文体などの雰囲気作りがとても秀逸。乙一さんのSFメルヘンでは、超常現象を目の当たりにした人々の間でときどき間の抜けた受け答えが交わされるんですけれど、本作はそういった部分を前面に強く押し出してきたような感じです。老人が一人称の主体になっているせいか、妙に語り口がおじさんくさくていい味です。
「冷たい森の家」
ダークメルヘン。乙一さんって、SFでもホラーでもないメルヘンを描ける現代の数少ない作家の一人なのかもしれません。
「Closet」
クローゼットにまつわる正統ミステリー。正統? フユミさんが妙にいいキャラです。
「神の言葉」
世の中に馴染むことのできない少年の苦悩のお話。メルヘンちっくで現実感はないのに、心理描写だけはやたらリアルなこの独特の雰囲気が実に乙一さん。
「落ちる飛行機の中で」
タイトルを見て分かる通りの逼迫した事態において、なぜか物凄く緊張感のない会話が交わされまくります。シュール。単に笑い話としても読めますけれど、それだけでは言い尽くせない寂しさも漂わせつつ。
「むかし夕日の公園で」
怪談風のショートショート。最後に「えっ」と思ってもう一度読み返したくなる作品でした。