『ペスト』

ペスト (新潮文庫)

あるとき突然ペストが蔓延しはじめた、アルジェリアの小都市オラン。感染を食いとどめるため外部から完全に閉鎖された街の中で、ペストに立ち向かう人々の戦いを描いた長編です。

文字が大きめであるとはいえ、新潮文庫で460ページとかなり長い作品なんですけれど、わりと一気読みできました。ひとつには、ペスト禍の行方という読者を牽引する明瞭なコンセプトがあったため、たいへん読みやすかったという理由が挙げられます。登場人物もそれぞれの性格や行動原理がはっきりと書き分けられていて、ちょっとしたキャラクター小説として見ることもできました。

この作品の中でとりわけ印象深いエピソードのひとつとして、パヌルー神父の説教が挙げられると思います。「このペストは神の下した罰であり、人々はその罰を受け入れねばならない」と説いていた彼ですけれど、罪のない人々がペストに苦しんでいるのを目の当たりにすることで、やがて考え方を変えざるをえなくなります。そこで最終的にかれの下した結論は少々アクロバティックで、なかなか興味深かったです。(google:パヌルー神父)

ところでアニメの『ブギーポップ・ファントム』に「世界愛」を説くパヌルーというキャラクターがいたんですけれど、このパヌルー神父こそがその元ネタだったんですね。シナリオブックでも元ネタがぼかされていてずっと気になってたんですけれど、ようやく長年の謎が解けました。すっきり。