たのしい神話(2-2)「総受けキャラになったアルセス」

 さて。主神アルセスは「利発で気さくな少年神」という爽やかな神格で、「紀元槍」という涼宮ハルヒ的な万能チートの槍を持っていました。

 浮気しまくって不幸な子供を各地に作りまくった何処かの雷神とか、受肉のための食料として人間を繁殖させたどこかの旧神と比べると、アルセス神は人に迷惑をかけないごくごく善良な神だったと言えるでしょう。

 ところが、それを面白く思わない者もいました。言語支配者や言理の妖精といった、解釈と記述によって神話世界を改竄し続ける上位世界の勢力がそれにあたります。

 彼らの一部は、「我々の世界の主神にしては面白みに欠ける」とかぬかしてアルセス神という神話的概念の改竄を試み始めました。そこで槍玉に上がったのは、アルセス神の美少年という性質、つまり彼の菊門でした。

 たちまち、アルセスはやられ役となりました。大勢の大人たちにお尻の穴を追い回されるアルセス。公園のホームレスに襲われて「ァツーィ!」と叫ぶアルセス。801同人誌(ナマモノ)のネタにされるアルセス……。どう見てもガチホモです。

 アルセス神という概念が改竄されていく過程で、幾つものエピソードが生まれました。次の小噺もそのひとつです。

 ウィータスティカという地に住まう精霊の三兄弟がいた。暑苦しい長男アリアロー。オカマの次男ダワティワ。メガネ男子の三男テンボトアン。彼らはアルセスにぞっこん惚れていて、どうやってアルセスを我が物にしようかといつも話し合っていた。
 あるとき、かれらは遂に妄想を行動に移した。さる孤島のマッドサイエンティストと取り引きし、かつて一族の英雄だった自らの父親ラニミーフ献体として売り飛ばすという暴挙に出たのだ。上等の実験体であるラニミーフを材料として、マッドサイエンティストは三兄弟のための丈夫な城を拵えた。
 その城には、アルセスの力を封じ込める魔術的機構が設置されていた。いつかアルセスを捕らえたとき、三兄弟は彼をこの城へ連れ込んで、その愛を思う様に貪り食うのだ。アルセスとの愛の巣、ウィータスティカ城の完成に喜んだ三兄弟は、揃って「ァツーィ!」と快哉を叫んでいた……。

 こうした神話的記述が増えていくことで、哀れアルセス神の威厳は地に堕ちました。ひどい話です。

 けれど、今度は別の勢力が異を唱え始めます。彼らは、主神であるアルセスが単なる総受けキャラであることを良しと考えなかったのです。最終的には彼らによって現在のアルセスのイメージが確立されるわけですけれど、これは次回に述べることにしましょう。