性別を超越した恋愛小説(同性愛的な意味でなく) - 長野まゆみ『新世界 4th』

新世界 4th (河出文庫)

 だからこの人たちは「犯人は実は双子でした!」級の驚愕の真相をどうしてこうもこともなげにあっさりと語りますか! 巻末では読者の質問に答える設定解説みたいなことまでやっちゃって(しかもものすごく淡々と答えてる)、そのさっぱりしすぎた態度に驚きを禁じえません。「設定」に対する作者の態度が興味深い幻想性別小説第四巻。

 この作品は男女の性別を超越した恋愛*1を描いています……と言うとまた801かよみたいな視線を向けられそうで心が痛いんですけれど、本作の場合についてはそういう意味ばかりではありません。つまり、「男」とも「女」とも言えない複雑な性別体系における恋愛感情が描かれているのです。

 男女という性別体系は、私たちの倫理観にダイレクトな影響を与えている非常に基本的な要素のひとつです。これは私たちが人類という種である限り逃れがたい宿命ですけど、この作品ではその大前提が崩れてしまっているのです。そこは基本的な倫理観すら私たちのものとは異なってしまう世界で、そういう意味で本作はたしかに思考実験小説なんだろうなと思います。

*1:ていうかそもそも男女の恋愛からして性別を超越してますよねー。