第1話「魔法少女きゆら」 Aパート(シーン1)

アバンタイトルの続き。

Q.魔法で何が出来ますか。*1
A.主に物語の文脈を操るよ。
Q.町の平和を脅かす悪者とか出ますか。
A.出ます。悪の天才科学者金城ひろしとか出ます。
Q.ライバルキャラとかは。
A.謎の美少女セラティドミナントスター・バイオレンスハッザード*2が第四話*3くらいで登場予定だよ!
Q.魔法のステッキとかコスチュームとか……。
A.欲しいの?(笑)
Q.ところで私って高校生なんですが、この年で魔法少女ってそろそろきつくないですか。
A.これは訳し方の問題で、原文の「魔法少女」は特に年齢の制限とかはないんだよ。ただしニュアンス的には「少女」が近いというので、この訳になったんだ。何が言いたいかって言うと、君は全く臆する必要はないってこと。*4
Q.そんで魔法少女の仕事って何ですか。
A.

「もちろん、"人々を幸せにすること"だよ!」


 間。


 声がでかいわりに全く心がこもってなかったので、聞き流しておくことにした。

「ひどい」
「とりあえず私、魔法を使ってみようと思うのね」
「素晴らしいね。使い方は君が本質直観*5的に理解しているはずだから、僕は何も教えないよ。それで、君は最初の魔法*6で一体誰を幸せにするのかな?」
 逃げやがった。説明のいちばんめんどくさそう*7なところを一言で逃げやがった。このマスコットはあまりまともにオラクルを務める気はないらしいので、私は勝手に話を進める。
「うちの班の諸星さんがね、うんクラスの班分けで当番とか校外学習とか一緒に行動する諸星さんっていう子がいるんだけど、その子が無口っていうか……なかなか他の人と打ち解けられない感じなのね」
「なるほど、いきなりヒットか」
「そんで、明後日がちょうど校外学習で、班行動の博物館見学なわけよ。だからね、魔法でその子と仲良くなれて……一緒に見学楽しめたら、それって凄くいいことなじゃないかって……」
「よし、それじゃあ明日はその諸星さんと魔法でお花畑だ!」
「おー!」*8
 このノリなら行けるぞ、と私は思った。*9

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*1:原作者の作品では、小説中に突然このような一問一答形式の展開が挿入されることがままある。

*2:槍持てる処刑人セラティについては、「バイオレンスハ"ッ"ザード」と小さいツが入る点がポイントである。

*3:第四話の翻訳予定はない。

*4:この部分のみ、洋物ゲームの翻訳解説文口調である。

*5:誤用である。

*6:しかし彼女は既に魔法を使っていると思われる。例えばアバンタイトルで彼女が何も言わないのにネズミとの会話らしきものが進んでいったのは、文脈を操作する彼女の魔法によるものものであろう。

*7:アバンタイトルに引き続き、このシーンにも情景描写や状況描写がない。

*8:なお、原作者は次のような言葉を残している。「台詞のみで、登場人物の表情やら感情やらの全てを濃密に語ることが出来るなら、それはとても素晴らしいことではないかという理屈を考えたんですが、これ使えますかね」

*9:彼女は特に根拠もなく意味もないことを頻繁に言う。