『ゴッホ殺人事件』高橋克彦

ゴッホ殺人事件〈下〉 (講談社文庫)
ゴッホ殺人事件〈上〉 (講談社文庫)
やっぱり高橋さんの作品ははてなでの言及が少ないですね。残念。講談社文庫に入っている『総門谷』は電波伝奇SFとして本当に「はう〜」をつけていいくらいの最高傑作級なので(ごめんなさい)、そっちがいける人には全力でお勧めですよ。
『浮世絵ミステリー』の正当な後継作たる美術ミステリー。定説では自殺とされているゴッホの死の謎と、スイス-東京で別々に起きた事件の奇妙な接点という二つの軸が複雑に関係しながらお話が展開します。冒頭からいきなりイスラエル対外情報部モサドだのアムステルダム検事局だのが関わってきて、国際陰謀サスペンスな雰囲気が濃厚に。アクションのない冒険活劇(どんなのですか)としても読めて、実に先の展開が気になるお話です。そのわりにはお話の根幹にゴッホの美術史的な解釈が大いに関わってきて、もう何がなんだか分かりません。
ヒロインを含む登場人物の半分が40代なかばだったり大学教授のはずのキャラがやたらと暇そうに見えたりで高橋さんとの世代差を感じちゃったりはしちゃいますけど、そういうこともあまり気にならないよくできた作品でした。