創世神話

 昔々、まだ世界に何もなく、天と地の区別やWikiWikipediaの区別すらなかった頃、そこにはただひとつだけの主体がありました。それ以外の何ものも存在しない世界にあって、その主体は唯一にして全なる存在でした。こういう場合のお決まりのパターンとして、その主体は自分しか存在しないその世界に飽きました。聖書にある通り、創世の七日間とか大洪水とかソドムとゴモラとかああいったことがやってみたくなったのです。試しにその主体は「光あれ」と言ってみました。しかしよく考えたらその主体は全存在ではあっても全能者ではなかったので、特にどんな現象も引き起こすことはできませんでした。その主体しか存在しない世界には一切の例外が存在しないので、その主体に何かを作り出すことが不可能である以上、その世界にその主体以外の存在が発生する可能性はまったくありえないということになりました。そのことに気付いたその主体は全てのものごとが何だかどうでもよいものに思えてきて、せっかく地下95階まで到達してそろそろクリア間近だった不思議のダンジョンの攻略を途中でやめてパソコンの電源を入れてニコニコ動画の鑑賞を始めてしまったので、その世界はいよいよ未来永劫そのままで何も起こることはなく宇宙も発生しませんでした。めでたし。