流水大賞『エレGY』の作者、泉和良さんはSFの人なんですよ
海燕さんがついにじすさんの小説に手を付けられました。よいことです。
ただし「最高傑作級」という言葉の意味するところを知っている人から見ると、海燕さんが手放しで誉めてるとはとても思えません。「次回作が楽しみの作家がまたひとり登場しました」とか、なんかもう余裕で営業モードじゃないですか! まだです。まだまだ、海燕さんを唸らせるには足りないのです。
実際問題として、『エレGY』一作から泉和良さんの作風はほとんどうかがい知れません。たしかに『エレGY』の表現力は相当なものですけれど、こういった作風は泉さんにとってむしろ特殊です。海燕さんの記事では「全男子必読の恋愛小説」なんてキャッチーな紹介がなされてますけど、これが泉さんの表現のほんの一側面であることを私は伝えておかなければなりません。
泉さんは、SFの人です。SF要素のない『エレGY』からは全くその片鱗も感じられないかもしれませんけれど、泉さんはSFの人なのです。150億年宇宙再生法改定とか、トレーダー分岐点とか、ドルバン金属とか、ボコノン教とか、タナトノートとか、ノーストリリアとか、ノーザンバランドとか、泉さんはそういったワードの頻出するワイドスクリーン・バロックや叙情SFなゲームをこれまで何作も作ってきたのです。
泉和良さんの作品が、アンディー・メンテがいかにSFであるかこんなところで語ってもきりがないので、今回は作品を紹介するにとどめましょう。といっても、小説から入ってくる人にやりこみRPGを勧めるのはナンセンスかもしれません。比較的、よみもの・ノベルゲーム形式に近いものを取り上げましょう。プレイ時間は総じて短かく、数分からせいぜい二、三十分といったところです。
きせきの扉
『エレGY』を読んだ人にとっては、最も馴染みやすいのではないでしょうか。『エレGY』で見せた繊細で痛切な悲哀の表現を漂わせつつ、泉さんのSF感覚に触れることができます。どちらかというと叙情SF。昔紹介記事書いてるのでついでにどうぞ
全人類5万年ひきこもり
冗談みたいなタイトルですけど、中身は特におちゃらけてもいません。暗い宇宙の中に引きこもったような、孤独感の強い作品です。お話を読むには数回繰り返さないといけないかもしれないですけど、その時間を入れても十数分でしょう。