感想:千澤のり子『シンフォニック・ロスト』

シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス)

 中学校の吹奏楽部のお話。部内で恋愛すると片方が死ぬ! というよくある怪談話がまことしやかに囁かれる中でほんとに人が死んでしまい、少年少女があれこれ思い悩む青春ミステリーです。

 小説としては淡泊。人が死ぬとは言っても派手な引きや展開はなく、落ち着いた叙述で淡々と進む作品です。吹奏楽部でミステリーで主人公の担当がホルン、なんて聞くと古野まほろさんの天帝シリーズを連想してしまいますが、本作にはまほろさんのように奇を衒った表現は全くありません。作風としては完全に真逆ですね。

 表紙は爽やかで、駅の本屋さんとかで気軽に手が伸ばせそうな感じですが、ミステリーとしてはすごい硬派。探偵が出てきて「これこれこういうことだったんですよ〜」っと説明してくれることもなく、全ての謎を解決するただひとつの決定的な事実を突きつけて物語を閉じる形。一読しただけで作品構造を完全に理解することは難しそう*1なので、多くの人に再読を強いてしまう作品ではあるかもしれません。

  • ヒナちゃんかわいい
  • 今井さんもかわいい
  • 主人公:なぜかモテる根暗
  • 副部長が面食いなのって『マーダーゲーム』の松浦さんが面食いだったのを踏まえた伏線? 細かっ
  • ラスト16章のほろ苦さが好き。青春青春してた本編の雰囲気とはやや異なりますが、大人になってしまった立場から若い頃の日々を振り返るのがこの作品の根本的な視点なのだと思います。

*1:読んでる間に真相に気づけた人は別ですが。