『AIRAM EVA』

知る人ぞ知るフリーゲーム製作集団、アンディー・メンテの新作ゲーム。読みは『アイラム・イヴ』プレーヤーが街のお医者さんになり、60日という限られた時間の間に患者さんを救っていくのが目的の病院ゲームです。患者さんを治療する診療パートと、医療品の素材を集めて調合したり医療技術を伸ばしたりする自室パートで構成されていて、システムとしては『マリーのアトリエ』シリーズなんかに近いですね。
難易度はシビア。規定の日数を経過するとゲームはそこでエンディングを向かえ、ごくわずかな要素を除いて基本的に次の周への持ち越しはないというストイックなシステムです。初プレイの場合、終盤にもなるとほとんどの病気に太刀打ち出来なくなるのが普通という壊れた難易度。ただしプレイヤーは周回を重ねるうちに「この病気にはこの治療法が効く」「この医療施設は便利なので早めに作っておかないといけない」ということが分かってきますし、この作品はそういったプレイヤー自身のノウハウがゲームバランスに直接影響を与える作りになっています。三周目くらいになると、スタートラインは同じはずなのに見違えるほど良い医師になっている自分に気づくことでしょう。そういう意味では、見た目は違えど『不思議のダンジョン』シリーズともよく似ています。
病院が舞台なだけあって、この作品のダウナーな雰囲気は凄いです。背景絵は全体的に薄暗く、BGMも落ち着いた静かな曲ばかり。そして何よりも、訪れる人がみな病人ばかりです。突き指や火傷のうちはまだ笑っていられますけど、最後の方になると全身骨折の人や銃撃された人なんかもどんどん担ぎ込まれてきます。ゲームに慣れていない一周目は特に酷くて、明らかに手術が必要な患者さんなのに包帯巻くくらいしか選択できる処置がないなんてこともざら。しかもなぜか医療ミス率が異常に高いので、誤って患者さんを殺してしまうことも日常茶飯事です。痛い痛いと泣き叫ぶ病人にろくな治療もしてあげられず、患者さんに死なれては遺族にぼろくそになじられる、そんなことを繰り返していれば嫌でも激しい無力感に苛まれます。誰かが言ってましたけど、感動とは別の意味で泣けてくるゲームなんて、本当にこれくらいのものでしょう。へこんでみたい人にはこの上なくお奨め、かもしれません。