『赤と黒』

赤と黒(上) (新潮文庫)赤と黒(下) (新潮文庫)
ジュリヤン……だめな子!
フランス文学なんていうから多少気負いつつ (というかへっぴり腰で) 挑んでみましたけど、人間根っこのところは何時でも何処でも大して変わらないというか。たしかに古典文学らしい表現に慣れなかったり、理屈回しを妙に感じたりで難解ではありました。けれど、疑り深くて慎重なくせに肝心なところで気が短く、本当は素直な子なのに努めて冷ややかに振舞おうとする主人公の捻くれた性格は、今で言うところの中二病そのままです。中途半端に賢く育ってしまった若者の必死さ加減が、痛々しくも微笑ましいです。
 というわけで、巨視的に見たときの大まかな流れは理解できました。けれど局所的に見たとき、たとえば「このページのこの行の意味は……」という風に考え出すと、やっぱりその辺りの表現の機微はちょっと理解不能でした。「どうしてこの人は、この台詞で急に怒り出したんだろう?」と前後の繋がりが分からなくなること多数。時代と土地柄に隔たりがあるせいなのか、単に私がこの手の作品を読み慣れていないだけなのか……。読み終えるのにかかった時間も考えると、あまり頻繁に読むのは難しいかなと思いました。