『159人の願いと幻想〜フィラデルフィア演義』

配布先→http://www.vector.co.jp/games/soft/win95/game/se164872.html
いっとき『雪道』で話題になった、ステッパーズ・ストップはポーンさんの昔の作品。現在公開されている中では、たぶん最古の作品ではないでしょうか。『雪道』と比べればやや拡散度は高いかもしれませんけれど、ポーンさんの特徴であるシンプルでストイックなゲームシステムはこの頃から際立っています。

●戦闘のルール - 『武力』について
  キャラクター名の下に表示される数値が『武力』です。
  斜線“/”の左側が現在の値で、右側が最大値です。
 ◎『武力』は生命力である
   武力はそのキャラクターのHPのようなもので、0以下になったら
   キャラクターは命を落とします。敵も味方も同様です。
   ただし死んだ味方キャラクタは、戦闘に勝利すれば生き返ります。
 ◎『武力』は攻撃力である
   武力はそのキャラクターの攻撃力です。
   攻撃時、『武力』の値の分だけ敵にダメージを与えられます。
 ◎『武力』は素早さである
   ターン中、敵味方ともに武力の大きい者から順に行動権が
   与えられます。同値のキャラクタがいる場合、
   それらは同時に行動したものとされます。

キャラクター一人の持つ数値パラメーターは本当にこの『武力』だけ。あとは10種類程度のパズル的な特別ルールがオプションされるのみで、一回の戦闘はおおむね十数秒でカタがつきます。たった一種類の数字だけでもこれだけのゲームが作れるという事実は、ひたすらに拡散していきがちなRPGに慣れているプレイヤーにとって大きな刺激となるでしょう。
ゲームは短いストーリーと共に進行していきます。このお話がまた素晴らしくて、『勇者VS魔王』の構図を『探偵VS犯人』の構図さながらにメタに扱う視点が魔王的に新鮮でたまりません。「西尾維新さんをストイックにしたような」という色んな人から怒られそうな形容を私は思い浮かべるんですけど、本作が作られた時期が西尾さんデビューのはるか前であることは重要です。"ノイエヴェル"とか"流祖"といったネーミングが世界観にハマりまくっていて、語感にはイメージを想起させる力があることを思い知らされます。本家サイトの奥の方には全二十話からなるサブストーリーというか完結編も置いてあるので、みんな読めばいいと思います。