『ゆめにっき』

ゆめにっき

とても暗い雰囲気の、夢の中(という設定)の世界を歩き回るゲームです。特にストーリーや目的はありません。歩き回るだけのゲームです。

えーと、はい。傑作。または怪作鬼作。まるでホラーと前衛芸術を足して割り算し忘れたような。不気味。とにかく不気味。不条理というよりも、これはむしろ狂気です。

人の話を聞いていると、どうやら『MOTHER2』のムーンサイドというマップの雰囲気に似ているらしいです。小林泰三さんの『酔歩する男』中盤のトリップシーンなんかに近いものがあるのかもしれませんけど、こと「狂気」の表現という点に関して、この『ゆめにっき』は数歩先んじるものがあると思います。ゲームだからこそ可能な狂気の表現。失礼ですけれど、プレイ中は本気で作者さん自身の精神状態を心配してしまいました。tanasinn

紹介文にある通り、不気味で広大なマップをただ歩き回るだけのゲーム。一応ツクール製ですけれど、基本的にキャラやギミック、背景は自作のドット絵。これのどこがツクール製なのか、と逆に驚いてしまうくらいです。短いループで流れ続ける多数の音楽もそれぞれ世界によく合っていて、名状しがたい雰囲気をこの上なく演出しています。そして道中に出現する背景やらギミックやらが、どれもこれも人の生理的な不安を煽るものばかり。これらの演出も、直接的な恐怖の表現よりも「何が何だか分からないから怖い」という種のものが多いです。

「ゲーム性」云々の議論はともかくとして、「自分から世界に没頭し、能動的に好きなだけ歩き回ることができる」世界を表現する媒体として、ゲームというフォーマットは最適なものなのだと思います。まったく、頭がおかしくなるかと思いました。頭おかしくなりたい人にオススメです。