『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』

 メガテン……あんまりやったことなかったんですが、ニンテンドーダイレクトのリマスター告知で盛り上がってしまって勢いで買ってしまったやつ。過去にプレイしたストレンジジャーニーはクリア目前という意味不明なところで何となく手が止まってましたが、今回はちゃんと本編クリアまでやり切りましたよ。えらい。

 サガ以上にヘンテコなシリーズという印象が女神転生にはありましたが、まあ大体合ってましたね。そもそも悪魔が仲間になる理由って何なんだろうと思ってましたが、別にそういうのはなくて、強いて言うならノリ。普通にエンカウントして襲いかかってくるくせに、戦闘中でも話しかけたらなんか相手してくれるし、気が向いたらそのまま着いてきてくれて、お願いすれば悪魔合体とかにも応じてくれる(あれけっこう痛いらしいのに……)。おぞましい造形ですけど、どこか抜けてて愛嬌があるんですよね……。

 特にこのIIIは人間がほぼ滅んでいるのもあって、異形の悪魔たちが普通のRPGで言う村人のノリでその辺ほっつき歩いてたり、よく分からない世間話を吹っかけてきたりします。基本的にダークな世界ではあるんですが、この悪魔たちの妙なノリのおかげかシリアス一辺倒というわけでもなく、ちょっと滑稽さの漂う奇妙な終末感を楽しめました。

 メインシナリオの方はさすがに真面目で、死んで生まれ変わった東京を新たな世界に導くために自身の思想を選び取れ、みたいな話が展開されます。本作は定番の秩序・混沌・中立の三択から微妙にズレていて、「強者だけの実力主義」「静寂な全体主義」の並びに「閉じた個人主義」が配置されてるのが面白かったです。ただ、基本的にどれも極端に異形で攻撃的な思想として描かれているので、「なんかヤだな……」という選択肢を選んでたら自然と「どの思想も選ばない」ルートに入った感じ。プレイヤーに共感してもらおうという作りでもないと思うので、織り込み済みの流れなんだろうなとは思います。

 仲間をどんどん入れ替えていくタイプのRPGなので、独特な編成の妙がありました。最前線で仲間にした悪魔は強いスキルを最初から持っているけど、未育成なので運用の幅は狭い。長く育てた悪魔は手持ちのスキルが多くて対応力があるけど、パラーメタでは見劣りしてくる。両者のいいとこ取りをするため悪魔合体を繰り返していくわけですけど、合体で継承できるスキル数には限りがあるし、魔法型のスキル構成なのに合体先がパワー型の悪魔ということも往々にあったりして、絶妙に悩ましい設計です。

 あんまり攻略を見ずに進めたい気持ちがあったので行き当たりばったりで育成してたんですが、システムやデータを完全に把握した上であれこれ考えながら計画的に編成を組めるようになるとかなり遊び方の感覚が違ってきそうですね。そこまでの状態に自分を持っていくのはなかなか大変そうですが……。

 ノーマルモードで遊んだ限り、初見で殺されることはあってもしっかり対策すれば順当に勝てるという感じで、難易度的にはそこそこくらいの印象でした。しっかり対策=適切なスキルや耐性を持った仲魔を揃えることなので、合体素材となる仲間を集めるところから始めないいけない序盤はなかなか大変でしたけど。特に怖かったのは序〜中盤のアクシデント死で、主人公が死んだら仲間が生きてても即ゲームオーバーなタイプのゲームなのに雑魚敵が平気で全体即死呪文を撃ってくるという音に聞こえる鬼畜の仕様。主人公がガッツ系スキルを覚えた途端、道中の理不尽さは目に見えて和らぎましたね……。全体で4回くらいゲームオーバーもらいましたが、全て前半です。後半はボス戦も全て初見で勝てましたが、これはコツを掴んだのもあるけど、単に道に迷って鍛えすぎたせいもあるかも……。

 そう、とにかく道に迷いまくりました。精神的に辛かったのはボス戦よりも圧倒敵に道中で、事故死の恐ろしさもさることながら、同じところをひたすらグルグル歩き回ることになる中盤以降のギミックダンジョンがとにかく大変。じっくり考えれば数手で解けるパズル系ギミックはまだ優しい方で、「正解ルートを進まないとスタートに戻る」系ギミックの施された長大な迷路は総当たりで探索していくしかなく、まさに苦行でした(終盤けっこう頻出した)。攻略サイトのマップとか見ればあっという間に進めるはずなのでだいぶ誘惑されましたが、そこはどうにか我慢したのでえらい(嘘、頭の中の地図が矛盾した時とかにちょっと頼ったりました……)。

 あとは休憩ポイントですね。セーブポイントの出現頻度自体はそこそこで、長めのダンジョンなら必ず何箇所かは設置されていました(特定階層のワープ迷路で長時間迷いまくったりすると、やはりアクシデントによるデータロストが恐怖でしたが……)。ただこのセーブポイント、回復ができるわけではないし、街などへのワープこそできるものの戻ってくることはできない一方通行仕様です。結果的に「このまま突き進むか、いったん拠点に戻って態勢を整えた上でもう一度入り口から再トライするか」の選択を頻繁に迫られることになりました。

 その他にも、「街」に相当する拠点でも基本的に敵が出るので回復ポイントからセーブポイントの間の微妙な距離を移動してる間にも敵とエンカウントしたり、宝箱の確実な開封や最適な悪魔合体のためにその場で足踏みしてゲーム時間を経過させて「煌天」を待つ必要があったり(もちろんその間に何度も敵が出る)、「て、手間!」と感じる動きを要する場面が頻出する設計でした。まあ昔のレトロゲームってそういうものですよね……みたいな感覚で受け入れてましたが、よく考えたらこのゲームPS2ですよね? 流石にレトロゲームではなくない?

 と、感想を書き連ねると苦労話ばかりになるんですが、振り返ってみると割と楽しい苦労だったのかな、という気がしてくるのがリマスターが出るほどの人気作である所以なんでしょうか。今はおろか当時の感覚としてもかなり手間と時間のかかる類のゲームだったと思うんですが、その分の遊び応えみたいなものを感じたのは確かです。じっくり腰を据えて遊べるというか、まとまった時間を作って腰を据えざるを得ないというか……。あんなにしんどかったのに後から「やってよかった」という気持ちになれるのだから、やはり良いゲームだったのでしょう。もう一度やってみたいかというと悩ましいところですが……(追加要素のアマラ深界は全く手付かずでしたが、もう一周する気力はないです……)。