今さらですけど『星の王子さま』を

星の王子さま (新潮文庫)

実は読んだことなかったので、文庫化をいい機会と思って購入。大切なことが見えなくなってしまった大人について。でも子供も理不尽ですよう。

読む人によって、ぜんぜん読み方の変わってしまう本なのだなあと思います。たとえば本当に無邪気な子供が読めば、大人の物分りの悪さに不満感を示す王子さまに感情移入するでしょう。逆に荒んだ生活に慣れてしまった大人が読めば、「忘れていた」何かに気付くことが出来るかもしれません。

では、大人というほど目が曇ってもいないけれど、子供の無邪気さが時に理不尽だということも知っている、そのくらいの微妙な年齢の人にとってはどうでしょう。もしかすると、あまり共感しきれないことがあるかもしれません。

中盤の星巡りに出てくる大人たちは多分に風刺的に描かれているので、まあどう見てもまともではありません。けれど、大人である「僕」と子供である王子さまの意見が衝突するシーンでは、一概に王子さまを全肯定できないところもあります。王子さまの言葉はたしかにある本質を突いているんですけど、それ以外にも存在する別の本質を無視してしまうこともあるのです。

そのため、大人と子供の両方に無理のない理解を示している人ならば、「王子の方だって理不尽だなあ」と思ってしまうこともありそうな気がします。でもそういう場合でも、一度社会に出て大人の世界に慣れてしまった頃にまた読み返すと、今度はまた別の感想を抱けそうな作品でもあります。そういう意味では、一生に何度も読み返すことのできる本なのかもしれません。