『ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?』

ROOM NO.1301〈2〉同居人は×××ホリック? (富士見ミステリー文庫)

まあいやらしい。行き当たりばったりの相手となし崩し的にエッチしまくってるくせに本当の恋人とはキスもできない主人公が、「僕に恋愛は向いてない」とかぬかして悩み落ち込むボーダーライトノベルの第二巻。

相変わらず不思議な文脈。主人公が手近な女の子とエッチしまくるという展開だけを取ってみるとその辺の18禁美少女ゲームと何ら変わりはないと思うんですけれど、その実、特殊な哲学に基づいたまったく異なる文法で書かれているのではという気もします。比較対象についてあんまり詳しくないので、そういうゲームをよくプレイする人の意見も聞いてみたいです。教えてえらい人!

ひとつ近い作品を挙げるなら、やはり『ゆびさきミルクティー』でしょうか。あれは作者が恣意的に方向を指定した「物語」ではなく、登場人物が最初に決められた行動原理に従ってどのように振る舞うかを「観察」するお話だと思っているんですけれど、この『ROOM No.1301』シリーズからも似たような印象を受けるのです。

ただしこの作品の場合、最初にシリーズ全体の後日談が挿入されることからも分かるとおり、お話の流れの大筋はあらかじめ決定されています。これは細部ではシミュレーション的な描かれ方をされていますけれど、大きな流れとしては作者自身が制御している部分があるということなのかもしれません。

作者の制御と言えば、最初に後日談という結果を提示して、そこに至る過程を少しずつ見せていくこの構成はいかにもミステリー的ではあります。また登場人物ひとりひとりの心理にしても、彼女たちはなぜあんな言動を取るのか、という部分がひとつのブラックボックスとなってもいます。このあたりの描写は、桜庭一樹さんが「恋愛をミステリーとして扱った作品」である『荒野の恋』と通じるところがありますね。