大学教授の非常識っぷりを風刺的に描いた、文学批評の入門書としても使えるナンセンスギャグ小説。
基本的には大学のしっちゃかめっちゃかな日常がえんえんと描かれていくんですけれど、各章のラストには唯野教授による文芸批評の講義が挿入されます。印象批評からポスト構造主義までを、砕けた口調で解説してくれます。
いえ、本当ためなりました。まったく予備知識がなかったとしても、まあそれぞれの主義の概要くらいは掴めるんじゃないでしょうか。(それでもハイデガーさんの項くらいになると、ちょっと理解が追っつきませんでしたけど)
専門用語を調べようとGoogle先生にお伺いを立てても、Wikipediaなんかだとやっぱり畑独自の言い回しでしか説明してくれないので、読解は困難を極めます。その点、唯野教授の講義はちゃんと"読め"ます。ただしその分、詳細なニュアンスなどが伝わりきっていないところはあるでしょうから、鵜呑みにしすぎてしまうのもまた危険だろうとも思いますけど。
講義以外の本編の方は、「ぎゃーエイズがうつるー」みたいな筒井さん流の露悪ネタ中心に進むので、だめな人はもう生理的に受け付けないかも知れません。講義の部分とそれ以外の部分はかなりスパッと分かれているので、批評の教本として読みたい人はその部分だけに目を通せばいいと思います。