『虹ヶ原 ホログラフ』

虹ヶ原 ホログラフ

 初いにおさん。テロリストがドンパチやるガンスリやら、マッチョの権化みたいな北方水滸伝やらの直後に読む作品としては、ちょっと食い合わせが悪かった気もしますが。

 人に感想を尋ねたら、閉塞感という言葉が出てきました。傍から見ていると、逃げようとすればどこにでも逃げられる状態である気はします。広い草原に自分たちで小さな円を描いて、その中でぐるぐる回って押しくらまんじゅうしながら「出られないー」と叫んでいる図のような。ただよくある話、円の中にいる人にとってそこには紛れもない壁があるのだと思います。

 また、ときどき何かの拍子で円の外に足を踏み出せる瞬間があっても、お互いが足を引っ張り合って結局抜け出すことができないみたいなこともありそうです。そういうお互いのしがらみでがんじがらめになってる感じは、複雑に交錯する作中の人間関係のもつれ具合にも象徴されている気がしました。日暮の妹さんなんかは、空気読めないのが幸いしてかあの町のいや〜な雰囲気からちょっと離れた位置に立てていたように思うんですけど、そんな彼女も結局は人間関係に足を引っ張られて円の中に埋没してしまいます。

 虚実入り混じって現実感の乏しいお話は、『低俗霊 DAYDREAM』なんかを思い起こさせるものでした。初読では意味わからなくてスルーせざるを得ないようなシーンにもちゃんと解釈の余地があって、そのへん再読性の高い作品だなあと思います。頭ぐるぐるぐるぐるしました。