『火刑法廷』 - うみねこ参考文献

火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)

 ものすごい今さらなんですが、私が海外の古典ミステリーを読むのってこれが初めてなことに気づきました。海外ミステリー自体、何年も前に『マルヴェッツィ館の殺人』一作を読んだっきり。もう完全にズブの素人レベルです……。

 昔はオカルトにある程度の信憑性があったから、霊の仕業とかを匂わすだけでも読者の興味を惹けたけど、合理的な解決が前提という感覚の現代でその手法はちょっと厳しい……というようなことを本作の紹介で森博嗣さんが言ってました。その筋で考えると、本作は確かに引きが弱かったように見えます。

 それでも解決編はけっこう変則的な構成で、楽しむことができました。型通りの「お約束」なんて、実は想像以上にあやふやなんだろうなと思ったり。意表を突くような探偵役の挙動が面白い作品でした。

 うみねこ関連で本作のタイトルが挙がるのは、まあ確かにその通り。「魔女がテーマ」という共通点は表面上のものであって、その辺はどうでもいいです。それよりも、本作の大オチとして描かれたような認識を作品構造の前提としてまず据えて、そこから先の世界を組み立てていったのがうみねこという感じ。うみねこの予習的に本作を読んでおく、というのは選択としてありかなーと思いました。