竜騎士07はそろそろミステリファンにぶちのめされるべき

 一年半くらい前、

 という記事を書いたことがあり。どういうものかというと、まあ「ミステリーに関してズブの素人だった竜騎士さんが、なんか勉強して帰ってきたよ! 凄いよ!」という話です。

 竜騎士さんがどのくらいミステリーの素人だったかというと、そういえば次のような有名なエピソードが存在します。

(シーン再現)*1

ファン「ひぐらし面白かったです。京極夏彦みたいですね」
竜騎士07「ありがとうございます。そういう同人作家さんがいらっしゃるんですか?」(素)

 とまあこんな感じで。もっと言えば、「壁越しに合気で殺す」レベルのアレをいちばん山場のところでやっちゃうみたいな人でありました。筋のいいアイデアもあるんですが、そういうのとああいうのをもうごっちゃごちゃにやらかしちゃう使い方のへたっぴさ、圧倒的な空気読めなさみたいなものがひぐらしの頃の竜騎士さんにはありました。

 一方最新作うみねこでの竜騎士さんは、ミステリーの一通りの作法を踏まえつつ、自分の作風にアレンジするだけの進歩を遂げています。ガジェットとか有名トリックとか以上に、その"構造"を掴めたんだな、という感触を得ることができたので、上述のような賞賛の記事を書いたわけです。この辺の感覚はうみねこという作品のルールが構築される上でも縦横に駆使されているようで、お話が進むごとに評価はますます上がっているという感触があります。*2

 こういった竜騎士さんの変化は、彼がひぐらしで名を上げるにつれて、ミステリーに詳しい人*3が周囲にどんどん増えていったことに大きく起因するんではないかなと思っています。だって見る人がひぐらしを見たら、「あああ何だこれ勿体ねえ!」ってあれこれ助言したくなるでしょうもん*4。そういったところで、古典とかガイドブックの習読よりむしろ人との会話の中で、竜騎士さんはミステリーの文脈、要諦を掴んでいったんじゃないかなと思います……とまあ、この段は完全な憶測ではありますが。*5


 そんなわけなので一方、

 で指摘されてるとおり、作品をたくさん読み込むことで吸収できる種の感覚は、相変わらずさっぱりなんだろうなと予想できます。ワトソン役がワトソン役であるにしても頭悪すぎる*6件しかり、ミステリー用語の使い方のヘンテコさ*7しかり。いかに理論武装したとしても、竜騎士07は空気読めないという性質はやはり運命的に健在なのです。

 最初にリンクした記事を書いた時点では、そこまで見えてなかったので、ちょっと一緒くたに誉めすぎたかなという感覚はあります。まあプレイヤーも別にクリスティとかカーとかの作風について戦人が滔々と語る的な展開を期待してるわけではないんで、そのあたりは特に問題ないんですが。ただ、それにしても最近よろしくないなと思う点があります。それは、上記の例のような未だ自分でもあんま把握できてない領域にまで、わりと迂闊にずかずか踏み込んで来がちな竜騎士さんの手癖の悪さですよ!!*8


 代表的なところでは

 この煽り文句とか、あくまで宣伝上のアジテーションであるにしても無駄に喧嘩売りすぎです。こんな言い方じゃ、ミステリーのコアなファンであればあるほど、気分を悪くして興を削がれるでしょう。ミステリーファンへの挑戦、不十分だった前作に対する雪辱戦というつもりでこういう文章を書いたんでしょうが、まあ概ね逆効果です。プロの推理作家が言えばまた反応が違うんでしょうけど、あの竜騎士さんがこんなこと言っても、前作で見限った人には「またなんか喚いてるよ」と受け取られるだけでしょう。

 最近だと、ミステリーの伝統的な手法に対して異を唱えるような主張が作中にいくらか見られます。たったひとつの論理的推理を綺麗に決めようとする伝統的推理手法は実は不合理だ、みたいな話。不合理だという主旨自体は筋が通ってると思うのですが、作中でもそう述べられているようにそれはまさに彼らの「美学」なのです。不合理であるという指摘はともかく、「それを美学とする」こと自体を外からとやかく言うべきではありません。

 もちろん竜騎士さん自身にこれらの伝統を否定するつもりはなく、ただ別のやり方を提示してるだけというスタンスなのでしょう。でも、どうにも伝統的ミステリーの側から見てカチンと来ないでもないような言い方になることが多いなー、というのが率直な印象です。前作で叩かれすぎた流れからの屈託が滲み出てしまうのか、単に言い方がまずいだけなのか、という内面を論じることはできませんが、前者の方で受け取ってしまう人は決して少なくないはずです。

 ていうか、表現上のアジテーションだとしても、伝統的ミステリーを肴や踏み台にして一席ぶつなんて、今の竜騎士さんにはぶっちゃけハードル高いんですよ! そういうところまでネタにしようとすると、構造の外枠だけじゃなくて空気感とか歴史認識とかの把握が絶対に必要で、そのへんが竜騎士さんにはまだまだ圧倒的に欠けてると思うです!


 うみねこは、ミステリーの構造とそうでないものの構造を今までにない感じに展開させた作品で、そこに見るべきところがあります*9。逆を言えば、本作は既存のミステリーの構造を否定したり不備を指摘したりするタイプの作品ではないわけです。なにより問題なのは、こういう不慣れなところで迂闊なことをやると、その分ボロも出やすいわけで……前作ひぐらしではまさにそれがためにあの大失敗を演じたと言えるでしょう。

 今回だって、わざわざ余計なことしたせいで上手くいくはずの全体の設計にまで狂いが生じる、みたいな展開が今後ないとも限りません……特に竜騎士さんの場合は! せっかくここまで上手く行ってるんだから、変なところで台無しにして欲しくないなということを、ほんとにほんとに思うのです。

 とゆうわけで、竜騎士さんはそろそろ詳しい人にどっかで一発バシキかまされた方がいいと思います! ミステリー畑の人たちは頑張ってください! クリスティもカーも読んだことない私はボロが出る前にお口チャックして引っ込みますんで! 愛がなければ視えない!! わぁい!

*1:伝聞の伝聞くらいなのでかなり怪しい。

*2:この辺は、解決編が進むごとにどんどんある面での馬脚を現していったひぐらしの展開とは逆の流れと言えるでしょう。

*3:ぱっと思いつくのはファウスト関係の編集さんとかですが、他にも見えない様々な人脈があることでしょう。

*4:ひぐらし制作中から既にこういう声は高まり、竜騎士さんの意識も最初と最後ではかなり変わっていたと思うんですけど、まあ最初に決めたオチを返るわけにも行かないのでああなったのかなと。

*5:その後のご本人の発言によれば、どうやら古典ミステリに関しては昔から結構な量を読んでいたそうです。それでも、 http://d.hatena.ne.jp/pucci2486/20080821/1219295249 こういうことを平然と言ってしまう辺り、現代ミステリーに対してもの申せるほどの理解があるとはとてもとても思えません。

*6:もっともこれに関しては、プレイヤーの頭脳レベルを竜騎士さんがどのあたりに想定してるかによるので、一概にはにゃんともなのですが。

*7:意味というよりも、それを使う文脈のズレ。

*8:いきなり激昂する感じで。

*9:なので、私はうみねこに関しても「奇想天外な事件状況」とか「独創的なトリック」みたいなものはほどほど以上には期待していません。それよりも、魔女とのゲームに見られるルーリングとそれに従った展開こそが眼目だと思っていて、こんな記事をいくつも書いてるのもそこのところを凄い凄い言うためです。