『インストール』綿矢りさ

インストール (河出文庫)
秋山瑞人さんの兄弟弟子じゃない方の人。
えっと、たしかに文章が並みじゃないですね。あまりにも心地よすぎて、いつの間にか文章の意味を追うのを忘れてしまうくらいです。ときどき分かりにくい表現がないではないのですけど、その一瞬の浮遊感すらも読み心地に貢献していたような気がしました。私はわりと残りページ数を気にしながら読んでしまう行儀の悪い読者なんですけど、気がつくと100ページも進んでいて驚きました。
インターネットや風俗チャットのようななまじ目新しい題材を使ってしまったので、下手をすると「現代社会の歪んだナントカを抉る」みたいなわけの分からない紹介*1をされちゃいそうですね。世に出たときも何か色々話題になってたみたいですし、色眼鏡で見られることの多いちょっと損な作品なのかもしれません。
ところでこの人、デビューしてからもう何年も経つと思いますけど、まだほんの数作しか作品を発表してないんですね。書き下ろしが載ったということはまだ書き続けているんだとは思いますけど、むー、やっぱり学業の方が忙しいのでしょうか。この人の作品は、もっとたくさん読んでみたいです。

*1:そういえば阿部和重さんの『ニッポニアニッポン』の裏表紙の紹介文がとにかく酷かったです。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101377243