『六番目の小夜子』

六番目の小夜子 (新潮文庫)
恩田陸さん。ああー、なるほど、このストーリーテリングは独特ですね。常にいくつかの謎を提示して読者の興味を引きつつも、ラストまで引っ張れそうな大きな謎を早い段階でポンと明かしてしまったり。最後の最後で大きな謎が一気に解決されるのもミステリーのカタルシスですけど、この作品の場合は思いがけないタイミングで真相がフッと判明する、その意外さが魅力なのだと思います。
本書の沙世子さん、『GOTH』の森野夜さん、あと傍系として『氷菓』の千反田えるさんなんかは、一本の同じ系譜の上に存在していると、かなりはっきりした感覚として認識しています。そのハイエンドが『少女には向かない職業』の宮乃下静香さんなんですけど、むー、このあたりのことをネタばれなしで表現するのは難しいです。

というわけで以下、上記の作品のネタバレ。


彼女たちは初登場時、一見すると非常にミステリアスな存在です。けれど描写が進むにつれどんどんボロが出て、最終的には"本質的には普通の、単に虚勢を張っている/変な趣味を持っているだけの女の子"であることが暴かれます。(特に宮乃下静香さんに関しては、それこそが『少女には向かない職業』のメイントリックだったと言ってもいいくらいでしょう) この流れは一部の人が思春期に経験した妙な優越感や全能感にリンクしていて、緩やかな、あるいは強烈なアンチなんとかになっていると思います、みたいな。