アエルガ=ミクニーの人類逆創造説

第一次地獄解放事件といい、まったく人間というのは危なっかしい存在です。放っておけばこっちの身まで危ういと考えた紀神がいました。それが、気まぐれとひらめきの女神アエルガ=ミクニーです。

アエルガ=ミクニーはなんとなくどうしたもんかなーと考えながら日々を適当に暮らしていました。そんなある日、ミクニーはふと【人類】の魔法を悟ってしまったのです。この魔法はとても難しいと言われていましたが、とにかく分かってしまったものはしかたがありません。一度分かってしまえば逆魔法を唱えるのは簡単なことです。

ミクニーは【人類】の逆魔法で一瞬にして人間と、人間の生み出したすべてのものをこの世界から消し去りました。しかし、それは一瞬のことでした。最初に【人類】を唱えた誰かは人間とその被造物とをこまめにセーブしておくのを忘れていなかったのです。

ほんの一瞬のタイムラグはありましたが、再び【人類】の魔法によってすべてがセーブデータ通りにほとんどそのまま元に戻ってしまったのです。それに気づいていたのはミクニーだけでした。ミクニーは折角の思い付き、折角のひらめきが役に立たなくてがっかりしましたが、すぐに他のことを思い付いて遊びに行ってしまいました。

でも、今でもときどきミクニーは気まぐれに逆魔法を唱え、やっぱり元に戻ってしまうということが繰り返されています。いい加減そんなことを繰り返しているので、偶にセーブデータに齟齬があって一瞬だけ世界に変なことが起こったりもします。空を飛ぶお皿のような物体を見たという人がいたり、芸術家が霊感を得たりするのはそういうことなのです。