『昴(10)』

昴 (10) (ビッグコミックス)

 ぞ〜ん(佐野史郎)

 真奈さん再び。すっかりヤムチャ。彼女がすばるさんの一挙一動に驚いたり解説加えたりしてくれてるのを見ると安心しますね! 相変わらず足引っ張りたいんだか応援したいんだか分からない(でも結局最終的には応援してる)言動が微笑ましいです。

 すばるさんの真奈さんに対する感情も面白いです。久しぶりに会った真奈さんを一目見て目を輝かせて抱き着いたりしてるところだけを見ると、真奈さんが時々すばるさんに対して向ける敵意や悪意に無頓着なまま一方的に「親友」の気分でいるようにも見えます。

 でも真奈さんに絡まれてカッとなりつつも「やめよう」と一息ついて喧嘩を避けたところを見ると、すばるさんの方もたまに喧嘩を吹っかけられていることに気付いてはいる様子。そうでありながら再会時のような無邪気な喜びっぷりができるところが、彼女の造型の面白いところであるのかもしれません。

 それにしてもこの漫画、一体どこまで行くつもりなんでしょう。前巻で解説された「メンタリティ」の問題なんて軽く飛び越えるようにして、すばるさんはどんどん上の上のステージへと昇っていくようです。なんか「限りなく広大な宇宙が光の速さでさらに膨張を続けるように成長」していく範馬勇次郎さんを見ているみたいな。

 今回は本当に芸術漫画が行けるところまで行ってしまった感じで、なんかもう発想が思考実験としてのSF入ってるような気すらしました。それでいて、「芸術」のある一形態が目指す方向性として、決して間違った表現ではないのが面白いです。

 ここまで描いてしまって、この先に何が描かれるのか想像がつきません。本当に宇宙人でも登場するのか、全人類総ニュータイプ覚醒へと導かれるのか。えっと、これってたしかバレエ漫画でしたよね?