『うみねこのなく頃に episode2 Turn of the golden witch』

 え、ええとですね。前話のepisode1は、シリーズ一作目としては落ち着いた、奇を衒わない堅実な作品でした。その分、二作目である今回は色々仕掛けてくるだろうなーと予想していたのです。実際、「今回は無茶苦茶だった」という前評判も聞いていたので、魔法でもハニワでもどんと来い、という気構えで挑んではいたんですけれどー。

 

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 ごめんなさい。私は竜騎士さんのアジっぷりを舐めていました。ぐうの音も出ませんというか、「この方向の無茶振りはもうこれ以上はやらないだろう」という最後の心の防波堤を連続四回くらい破られました。ひ、ひー。

 言ってみれば、ひぐらし鬼隠し編」の衝撃と、「祟殺し編」の超展開と、「皆殺し編」のちゃぶ台返しとがいっぺんにきた感じ。「そこまでやるか」という基準では、この時点で既に『ひぐらしのなく頃に』を超えるものを感じてしまいました。

 ここでは「ちゃぶ台返し*1という点がひとつ厄介で、episode1で立てていた見通しが大なり小なり狂わされてしまったことは否めません。ただ、まだまだ序盤というこのタイミングでちゃぶ台をぶちまけたのは、ひぐらし皆殺し編」と同じ徹を踏まないためのよい判断でした。

 序盤でこれだけ堂々とぶちまけるものをぶけまけておけば、「話が違う」と批判されることも少なくなるでしょう。せいぜいが、「これは自分の見たいものとは違う」とプレイする前から離れて行ってしまう人がいるくらいです。どうせ「やりたかったことはこれ」なんですから、変に隠し立てせずとっとと腹を割ってしまったのはよかったと思います。

 そういうわけで、斜め上過ぎる超展開の連続にプレイ中は何度も仰け反りそうになりました。でも後から考えてみると、そういうトンデモ要素のほとんどが目眩ましで、骨格の部分はむしろ「整理された」という感が強いです。積極的な読み取りは必要ですが、結果的に今回はこういう構図で来るのだなというのが大分すっきり把握できました。

 とは言っても竜騎士さん、やっぱりかなり無茶してるなあと思います。竜騎士さんがやろうとしているのは、前例はまだしも成功した類型なんてひとつもないような試みなのです。『ひぐらしのなく頃に』も十分無茶だったじゃないかという話はあるんですけれど、当時の竜騎士さんは自分が何をしてるか分かってませんでした。自分が地雷原に自ら突っ込んだのだということを、本人が全然理解していなかったから、あの蛮勇がありえたのです。

 でも、今は状況が違います。ミステリーについてそれなりに理論武装した竜騎士さんは、この『うみねこのなく頃に』の試みがどれだけ危険なものか、十分理解しているはずなのです。それなのに、一発当てた後ということで守りの姿勢に入るどころか、またこんな無茶な挑戦をはじめてしまったことには本当に驚きました。

 メディアミックスやなんやかんや、色んな仕事を平行して受けている姿を見ていると、竜騎士さん大丈夫かなーと思ってしまうこともあります。でも、少なくとも作品を作るということにかけて、竜騎士さんは今でも本気のままなんだなあということが本作で確かめられたのは嬉しかったです。はっきり言って、うみねこひぐらし以上に冒険的な攻めの姿勢で作られていると思います。

 あと単純によくないなあと思った点として、無理に凝った演出をしようとして失敗してる感触が全体的にありました。竜騎士さんもそろそろ慣れてきたのか、作中に色々細かい芸が散見されるようになってきたんですけれど、そのいくつかはアイデア先行という感じしかしませんでした。つまり、演出としてちゃんとお話に活きてないのです。

 ひぐらしのときは、BGMと立ち絵と簡単なエフェクトだけで絶大な効果が演出されていました。でも今回は、手数が増えたのが仇となって逆に使いこなせなくなった印象があります。やはり、凝ったことをしようとすればするほど歴然とした技術力の差が現前してしまうわけで、そのへん無理してFateみたいなことしなくていいのにとは思ってしまいました。

 ともあれ、目頭チョップ食らって混乱はしましたけど、よく考えてみるとepisode1の時点で立てたこの仮説(ネタばれ注意)がけっこう的をえていたことが分かって嬉しかったです。竜騎士さんのファンを何年も続けてきた甲斐あって、その思考もいくらかはトレースできるようになったのですよ。わーい。

*1:いえ、「チェス板をひっくり返す」ってそういう意味じゃないでしょう。