フィクションに閉じ込められた少女たちにリアリティの救いはない話 - 沙村広明『ブラッドハーレーの馬車』

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

 [これはひどい]タグの嵐。初沙村さんがこれだったというのはいいんですか悪いんですか。

 『GUNTHLINGER GIRL』なんか目じゃないぜっていうくらい、直球の少女残酷物語。「義体はなんで女の子だけなん?」とか、破綻がその程度で済んでいるガンスリが可愛く見えます。

 この作品の中核をなす「ブラッドハーレー」の設定はあまりにも無理矢理で、恣意的に作られています。そしてその恣意性の強さこそが、"少女が残酷に陵辱される姿を描く"ためだけに用意された世界観を逆に強固にもしています。強力なフィクションで塗り固められたこの世界には、「現実問題としてこうはならないだろう」という常識の入り込む隙間がありません。だからこの世界に閉じ込められた少女たちは、リアリティという希望に縋ることすらできないのです。

 ただ、そういった作り物っぽさを感じさせない、別の意味での凄絶な現実味をこの作品は帯びています。方向性としてケッチャムさんの「隣の家の少女」に近いものがありますけれど、ケッチャムさんのような人間そのものへの絶望や断罪や糾弾の視点はなく、ただ淡々と少女残酷物語を紡ぎ続ける沙村さんの態度には独特なものを感じました。