『水滸伝(十四) 爪牙の章』

水滸伝 14 爪牙の章  (集英社文庫 き 3-57)

 孫二娘さんと裴宣さんのエピソードにおったまげました。原典には当然ないでしょうし、梁山泊VS宋という本筋と関わるわけでもないですけれど、ここでこういう話を持ってくることに北方さんの人間描写に対する矜持のようなものが感じられました。

 遂に官軍20万という数字が現実のものとして迫ってきて、もう一体どうする気なのかという。もはや勝機なんてないようにも思えますけど、敵側からすれば20万の軍を動かすのは国が傾きかねない大仕事。いくらかの期間を凌ぎきることで今後の反撃に繋げることもできるということで、よくできてるものだなあと思います。

 今回の巻頭のイラストは張清さんでしたけど、本編ではぶっちゃけ顔出し程度でしたね。ここは後半雄雄しく戦った錦毛虎燕順さんが巻頭に来そうなところだったと思うんですけれど、あえて張清さんが持ってこられたのは彼が今後の安定して大活躍していくという予兆なのでしょうか。得意技が石つぶてって、たしかに汎用的に活躍できそうな性能。序盤で出て来ると便利すぎるので、この登場時期には納得しました。