北方謙三

『岳飛伝(四)』

金と南宋が本格的にぶつかりはじめて、本当に『岳飛伝』という感じになってきました。このシリーズになってから出てきた新キャラ・孟遷もすっかり岳家軍の要の一人という感じになっていて、この面子の中に牛坤と姚平がいないのは寂しいなという気持ちになり…

『岳飛伝(三)』

岳飛伝というタイトルを見たときはどういうことになるんだろうと思いましたけど、いちおう今のところは梁山泊に比重を置いた話が進んでますね。ただ梁山泊の人間が岳家軍など別勢力に片足を突っ込んだり、交流を持ったりもしていて、国のかたちが少しずつ柔…

北方謙三『岳飛伝(二)』

ようやく聚義庁に集合し、揚令亡き後の梁山泊について語り合う面々。そのメンバーに初代水滸伝の一〇八星がもう数人しか残っていないことに気付き、彼らのほとんどが死んでしまったのだと改めて思い知らされました。物語当初から作中でも数十年が経過してい…

『岳飛伝(一)』

長かった文庫化待ち……。また数年空いちゃったので詳しく覚えていない登場人物も多いんですが、文章があまりにも肌に合うので立ち止まることもなくすらすら読めてしまいました。「これで死ぬような奴ならそこまでだ」みたいなシーンがバンバン出てくるマッチ…

『水滸伝(十九) 旌旗の章』

完結。長かった……とは言いません。この十九巻、本当にあっという間でした。 一冊読むごとに別の本を間に挟んでとやるのが面倒になって、十二巻から十九巻まではもう一気に読んじゃいました。でも、短い期間に八冊もの量を読んだという感覚はありませんし、シ…

『水滸伝(十八) 乾坤の章』

後半のあるエピソードで、このお話は完全に水滸伝という原典の「枠」を越えたなあと感じました。次シリーズへの布石となる楊令さんは別としても、もうこの人を原典の百八星に続く新たな一星として付け加えてもいいじゃない、とまで思ってしまう展開でした。…

『水滸伝(十七) 朱雀の章』

ウギャーッ! 楊令さんが小池一夫キャラみたいになってしまって私はとっても悲しいです! え、えれくち(全力で検閲されました はっきりと、戦の終わりが見えてきました。禁軍元帥の童貫さんが遂に兵を率い、勝っても負けてもここで終わりという局面に来てい…

『水滸伝(十六) 馳驟の章』- 史文恭は大変なものを盗んでいきました

漢たちの夢です。みたいな。 次の巻でラスボス童貫さんと本格的にぶつかりあうことになるので、事実上最後の小休止となる一冊。小休止と言いつつも、裏でやってることは調略暗殺の大合戦。道士妖怪の類が跋扈する伝奇小説でも、ここまでの凄味はなかなか出せ…

『水滸伝(十五) 折戟の章』

ここまで、危ういながら「勝つ戦」を続けてきた梁山泊の勢いも、官軍10万を相手にして遂に頭を打ちました。各拠点を一斉に攻撃され、一箇所でも破られれば即梁山泊自体の陥落に繋がってしまうという状況。相手が疲れきるまでひたすら「耐え抜く」しかないと…

『水滸伝(十四) 爪牙の章』

孫二娘さんと裴宣さんのエピソードにおったまげました。原典には当然ないでしょうし、梁山泊VS宋という本筋と関わるわけでもないですけれど、ここでこういう話を持ってくることに北方さんの人間描写に対する矜持のようなものが感じられました。 遂に官軍20万…

『水滸伝(十三) 白虎の章』

戦いの規模も、遂に官軍の総動員数十万なんていう数字が出てくるようになってしまいました。梁山泊軍も三万を越えるし、霹靂火秦明、双鞭呼延灼、大刀関勝という泡吹きそうな面子が将軍として揃い踏み。ここまでの経緯を思うと、もうヨダレでも出んばかりの…

『水滸伝(十二) 炳乎の章』

燕青さんがとにかく凄い一冊でした。頁数として考えると、実際に燕青さんが活躍してる場面はさほど多いわけではないんですけれど、読後に残る印象は強烈です。林冲さん、史進さんといった梁山泊でもスタークラスのキャラクターに匹敵する個性を、この一冊で…

『水滸伝(十一) 天地の章 』

波間の章。随所に「暗殺」という言葉が登場する巻でした 。梁山泊側では、十傑集でお馴染み混世魔王樊瑞さんが「暗殺者」として公孫勝さんから大抜擢。青蓮寺側では、遂にあの史文恭さんが登場してしまいます。その役回りは、青蓮寺の放つ老練な間者にして暗…

『水滸伝(十) 濁流の章』

全十九冊の折り返し地点ということで、これまでにも勝る激動の章。「VS双鞭呼延灼」の一冊です。 ここに来て、梁山泊軍がはじめて受ける"敗北"。この一大事は、今までにない鮮烈な経験として梁山泊に降りかかります。多くの同志が一時に命を落としますが、彼…

『水滸伝(九) 嵐翠の章』

一丈青扈三娘さんが梁山泊の仲間入りを果たす顛末はわりとあっさりと流されて、これはこれで確かに北方さんらしい進め方だなと思いました。梁山泊に一族郎党を皆殺しにされたことを受け入れるまでの彼女の心の動きはあえて描くことを避けられた感じで、次に…

『水滸伝(八) 青龍の章』

前巻を下準備とし、この一巻を丸々使って行われた独竜岡攻め。まさに総力戦、梁山泊にとってこれまでで最も大きな戦いとなりました。 徐々に死者も目立ち始め、主要登場人物の死が当たり前の作品となってきました。宋という大きな権力を前にして、一人、また…

『水滸伝(七) 烈火の章』

梁山泊の棟梁・宋江一行(五人)を官軍(一万数千人)が包囲する……という異様にテンションの高い状態から始まる第七巻。でもこの巻が終わる頃には更にテンションが高まっているという天井の突き抜けぶりです。 今回は、敵の中枢である青蓮寺の動きに梁山泊と同じ…

『水滸伝(六) 風塵の章』

し、死亡フラグがーあわわわわ。 一巻の頃から「凄い奴」として名前を盛んに囁かれながらも、一度としてその姿を作中に現すことのなかった秦明将軍が満を辞しての登場です。北方さんはタメというか引きというか、読者を煽って焦らして期待させていちばんいい…

『水滸伝(五) 玄武の章』

衝撃の、と形容したくなる第五巻。お話は遂に「ある一線」を越え、これまでと全く異なるステージに突入しました。「どんな危機でも梁山泊の英雄だから最後は何となかるだろう」という安心感が保障されるのはここまで。これ以降はもう、都合のいい物語補正は…

『水滸伝(四) 道蛇の章』

絶望した! 四ヶ月も前に読了してたのに感想書くの忘れてて絶望した! これまで後手後手に回ってきた青蓮寺が、遂に一歩先手を取りました。これから敵味方入り乱れた混戦になっていくのかと思うとドキドキが止まりません。いえ、それは梁山泊がピンチに陥る…

『水滸伝(三) 輪舞の章』

青面獣楊志さんや行者武松さんに焦点が当てられ、同志たちの中心人物である宋江さんにも大きな動きが見られる第三巻。そしてこの巻で、梁山泊の最大の敵である青蓮寺の思想もだんだんと見えてきました。 あらゆる策謀を用いて国を支える青蓮寺ですが、意外な…

『水滸伝(二) 替天の章』

一巻で名前だけはよく挙がっていた武松さんが本格的に登場。また、打倒すべき政府の中枢である青蓮寺についての描写、青面獣楊志や致死軍公孫勝の登場など。世直しを目指す同志たちは、替天行道の旗の下に続々と集まっていきます。中でも本書で多くの頁が割…

『水滸伝(一) 曙光の章』

水滸伝! 全19巻の大作ですけど、あまりにも面白そうだったので思わずジャケ買いしちゃいました。108人の英雄が梁山泊に集って大暴れするという荒唐無稽で破天荒な原作が、北方謙三さんの手によって政治・経済などの整合性を兼ね備える正統な歴史小説に生ま…