『水滸伝(六) 風塵の章』

水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫 き 3-49)

 し、死亡フラグがーあわわわわ。

 一巻の頃から「凄い奴」として名前を盛んに囁かれながらも、一度としてその姿を作中に現すことのなかった秦明将軍が満を辞しての登場です。北方さんはタメというか引きというか、読者を煽って焦らして期待させていちばんいいタイミングで堰を切るような演出が上手いですね。こっちは乗せられまくりです。

 前巻で大きな戦いがあった分、今回は出来事自体は大人しめです。新しい登場人物を迎えたり、梁山泊内部の仕組みを整えたりと、今後の怒涛の展開のための「準備」としての意味合いの強い巻だったと思います。嵐と嵐の間の凪というかー。

 中でも特に大きそうな転機は、今後梁山泊にとっての最大のライバルとなりそうな切れ者・聞煥章さんの登場です。この人一人で梁山泊の英雄数十人分の動きをしそうな雰囲気があって、もう本当に堪忍してえという気分。びっくびくです。

 私は原作を読まずにいきなりこの北方水滸伝から入ったクチなので、「原作はどういうものだったんだろう」と逆算的に想像するのがまた面白いです……とか言うのは負け惜しみでしょうか。「原作との差を見る」という重層的な楽しみもまたこの作品の醍醐味のひとつだとは思うので、その点がすこし惜しくはあります。どこかに数時間くらいで読める水滸伝まとめありませんか!(もったいない)