第1話「魔法少女きゆら」 アバンタイトル

「*1」とかのコメントは訳注です。第一話で終わりですが、Aパート、Bパートと続きます。

「おめでとう!」

 ネズミがしゃべったので、私は魔法を信じることにした。*1

魔法少女委員会は、君に魔法使い師の素質有りと正式に認定したよ。君は今日から、この紀津市の第八代目魔法少女だ。僕は委員会との連絡係にして、君のマスコットオプションとなる謎の生物。よろしく頼むよ」
 信じたといっても、こう矢継ぎ早に説明されてはたまらない。私は覚えが悪いのだ。そんな顔をしていると、この利口なネズミは的確に状況を察したらしい。
「ちなみに細かいことはこの冊子に書いてあるから、家に帰ってゆっくり読んでね」
 ちゃんと製本されたマニュアルだ*2。さすが委員会というだけあって、お役所みたい*3にばか丁寧だ。
「あと君は僕をネズミと思ったようだけど、残念僕はネズミでもリスでもありません。あくまで謎の生物。具体的な描写はおいおいの記述に回します*4
 ネズミ(ネズミでいいや)は胸を張る*5。しかしネズミにしろリスにしろ、こういうまんま自然界の動物が口を利いたり人間的な動作をするのはちょっと気味が悪くないこともない。
「どうやら君は僕の姿が気に入らないようだね。魔法少女に当然あってしかるべきオプションとして、委員会はそのあたりも心得ている。僕の姿をアニメ的に表現するとこうなります」
 ネズミが化けてネズミになった。三次元のリアルなネズミ*6から、二次元的でアニメチックな三次元のネズミに。結局三次元なんだけど、これはちょっと新感覚。

「やだキモかわいい」*7
「キモかわいいとはひどい」

 こうして私は魔法少女になる。

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*1:このシーンは突然このように始まるので、両者がいったいどのような状況で邂逅したのかその描写からは分からない。

*2:このネズミが手の平に乗る程度の大きさであることは後から知れる。魔法少女マニュアルが豆本的なサイズだとは少々考えがたいので、一体このシーンがどのように実現されたのか疑問である。

*3:彼女の役所観が垣間見えて興味深い。

*4:ネズミはこのように言っている。

*5:この描写で、このネズミに胸があることが分かる。

*6:しかしリアルといっても、ネズミともリスともつかない謎の生物であることを忘れてはならない。

*7:本編中、これが彼女の最初の発言である。