『天球儀 藤崎竜作品集3』各作感想1/2

藤崎竜作品集  3 天球儀 (集英社文庫―コミック版)

 えらい間が空きましたが『天球儀』感想の続き。一品ずつ書きます。書影でないのが残念。

「天球儀」

 これだけ初読。藤崎さんがドタバタギャグを描くとこうなるという。最後のオチまでの骨組み構造がまずあって、その隙間を埋めるためにどんどこ個別のギャグを投入して肉付けしてる感じです。

 交通事故で死にそうな主人公を助けるために友だちがあれこれやるっていうのがお話しの一面ですけれど、ぎゃあぎゃあ騒ぎながらいろんな手を試す彼らが(友だち死にかけてるのに)妙に楽しそうで、この辺が藤崎さんのノリだなあと思いました。電気ショックで蘇生を試みる際の「死ねぇええええっ!」の掛け声にちょう吹きました。

「異説 封神演義

 涎飛ばしながら「ゾッフィー!」とか叫ぶ四不象の汚らしさが衝撃的。ゾッフィー! 飢えたおっさん連中をはじめとして汚らしいキャラがいっぱいいっぱい登場するんですが、主人公の大公・望ちゃんだけやたら可愛いくて全てを帳消しにしています。飢えた餓鬼どもに崇め奉られアイドル視されてくるくる回る望ちゃんの図はあまりにも異常。「うふふ――いるわいるわ飢餓で下っ腹がふくれている餓鬼どもが――」とか笑顔で言いつつ白いドロリとした栄養食をふるまう望ちゃんの素晴らしさと言ったらありません。自作のパロディとかのレベルを越えて、とにかく意味わからん作品でありました。

「milk junkie」

 藤崎さんはこの作品がお気に入りだそうなんですけれど、他の作品と比べてどのあたりを気に入ってるのか分かると藤崎さんの嗜好が分かりそうだなと思ったり。鍼中毒で全身に鍼刺してケラケラ笑ってるお姉さんが素晴らしいです。全体見渡した感じ、こういう「外にもうひとつ世界があって」とういオチが、藤崎さんの作品には多いのかもしれません。

「ユガミズム 」

  藤崎さんはこの作品があまり気に入ってないそうなんですけど、他の作品と比べてどのあたりを気に入ってないのか分かるとうごごごご。藤崎さんは恋愛要素が苦手みたいでほんとんど描かないんですけれど、実際描こうとするとこういうこっ恥ずかしいお話になっちゃうわけですね。いえしかし藤崎さんの描くくるくる変わる女の子の表情はたいへん可愛いです。