『Landreaall(1)(2)(3)』

Landreaall 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

 キリのいい3巻まで読了。

 ページをぱらぱらめくっただけでは、こざっぱりとしていて感じの良い、でも本当に普通の漫画という印象。実際、あっさりした絵とストーリーは非常に読みやすくて、何も考えなければ軽く読み流せてしまう作品ではあるのです。

 でも、ちょっと腰を据えて読んでみると、軽くひっかかる描写、一瞬何を言っているか分からないようなセリフが節々に散見されます。これらの要素は実にさりげなくて、「よくあるライトなファンタジー漫画でしょ」という感覚で読んでいれば、あっさりスルーしてしまうかもしれません。でも、そこでふと立ち止まってじっくり考えてみると、その世界の背後に控える遠大な世界が見えてくるわけです。この作品自体が、練り込まれたひとつの系をなしていると。

 雰囲気は全然違うんですが、『胎界主』なんかと同様、実は奥行きのある世界が背後に隠れているという感がひしひしと伝わってきます。のほほんとしつつ、実は常に裏の裏の裏くらいまで計算してして行動している主人公も、『胎界主』を*1彷彿とさせます。こういう「伏線だけばらまいてそしらぬ顔をする」キャラクターってこの手の作品では非常に有用で、時限式の仕掛けを大量に盛り込んだ上で最良のタイミングで炸裂させることに、何役も買っていると思います。

 お話としては「旅立ち前の儀式」が終わった段階であり、物語と世界の構造が本格的に稼働し始めるのはこれからなのかなという気がします。明らかに、何度も再読してこそ面白さの引き立つ作品。多少高くついても、常に手元に前巻揃えておくようにしたいです。

Landreaall 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) Landreaall 3 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

*1:自我を保つために人助けをせざるを得ない『胎界主』の稀男と比べると、本作のDXは本当に屈託なく全てをよい方向に導くキャラクターなので、その内面は正反対ではあるのですが。