『斜め屋敷の犯罪』

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)
 どうしても『捩れ屋敷の利鈍』とごっちゃになってしまう斜め屋敷読了。呆れたことに初島荘さんです。「島荘」を一発変換で単語登録してくれるATOKってなんなの。別に最初から辞書登録されてるわけでもないんでしょうけど、いつかどこかで一回打っただけで覚えてしまうATOKはとても賢い子です。GoogleIMEってなんですか。

 なんかものすごい古い話ですけど、MYSDOKU3の課題本だった縁で読みました。会の模様は杉本さんが詳しく書かれています。リンク先にもある通り、「無邪気な推理小説だなあ」というのが私のいちばんの感想でした。

 あからさまなお屋敷、あからさまな密室殺人、あからさまな容疑者たち、あからさまな探偵……あらゆる違和感を「だってミステリだから」でねじ伏せようとする豪腕というか、お約束に対するあっけらかんとした態度というか。そういうあまりにも屈託のない雰囲気が、私なんかが当たり前に持っているジャンルへの自己批判的な視点からあまりにも遠いところにあって、実に「無邪気」に感じられたのです。

「探偵行為の暴力性」云々は私自身けっこう気になるタチで、そこに無自覚な作品に対する生理的な拒否感とかはけっこう身に覚えがあります。でも、それにしても、本作くらい堂々としていると逆に嫌味がなくて、とても清々しく感じられました。探偵が終始自己批判してる米澤さんの作品なんかとはえらい違いです。

 時代性なのかな? とも思ったのですが、本作の出版時期は新本格が台頭する数年も前とのこと。要はこの作品がヘンテコなのだ、という話だと思うのですが、こういうひと足もふた足も飛び越えたような作品が結果的に新しい時代の嚆矢になるとは、世の中よう分からんものです。