もうこれ本編でいいんじゃないかしら - 『ひぐらしの哭く頃に 雀 燕返し編(下)』

ひぐらしの哭く頃に 雀 燕返し編 (下) (近代麻雀コミックス)

 面白かったです! 初読時は麻雀の基本ルールくらいしか知らなかったので、ゲームの展開をよく理解できなかったりもしたのですが、それでも「とにかく何かすさまじいが起こっている」ことが伝わる漫画でした。これはもう山田J太さん凄い、としか。その後、たまったまネット麻雀とか頻繁に打つようになって、ある程度打ち慣れてから再読してみたのですが、理解できてみるとこれがまたえげつない話で……。要所要所に出てくる凝った牌がしっかりと"演出"になっています。あんな配牌が続いたら、そりゃKじゃなくてもKOOLになりますよね……。

 ギャグ以外で「部活」を終始メインに据えた竜騎士さん原作の『ひぐらし』は今までありそうでなかったので、その意味でも読み応えのある一冊でした。竜騎士さんの作風だと、外に敵を作って戦うパターンよりも、こうやって仲間内で火花を散らすお話の方がいい意味で安心して読めるなーと思います。部活の駆け引きが好きだった、という人はぜひ!

 上巻しか出番のなかった詩音さんは残念ですけど、それ以外の部活メンバーは個性と不可分の役回りが全員にしっかりと与えられていて、さすがは竜騎士さん原作といったところ。特に、魅音さんが「部長」として威厳を放ちまくっていたのが嬉しかったです。ゲーム本編だと後半アルェー(・3・)化しちゃう彼女ですけど、本作の彼女は勝負に対する真剣さを最後まで徹底的に貫いています。少なくとも部活の中では、彼女こそがもっとも恐ろしい強敵だったことを久しぶりに思い出すことが出来ました。

 ひぐらし本編ってテーマがややごちゃごちゃしているんですけど、本作は狙いを「疑心暗鬼の打破」というシンプルな一点に絞ったことで、見事に筋の通った「外伝」に仕上がっています。『鬼曝し編』とかの準正伝に並べても遜色のない出来。ひぐらしが好きで、麻雀もある程度分かるという人にとってはマストアイテムでしょう。本編が完結して4年以上経った今でもこういう作品が出てくるのはよいことです。コンテンツの寿命がどうとかはすごくどうでもいいのですが、ひぐらしって私の中でまだまだ楽しめるものなんだなあ、と感じられたのはとても嬉しいことでした。