『うみねこのなく頃に咲』やりました

 今さらですが、やりました。発売直後に買いはしたもののなんか手をつけるのが怖くてずっと放置していた『うみねこのなく頃に』最新作にして、新シリーズを前にした最後の節目っぽい雰囲気のあるスピンオフです。まあ外伝的な軽めのスピンオフは竜騎士さんの気が向いたり何かの企画が立ち上がったら今後もちょろちょろ出たりはするんでしょうけど、それにしても今回は締め感が強いですね。なにせ『Last Note』ですよ『Last Note』! 怖い。なんで私はうみねこの一挙一動にこんな心乱されないといけないんですか? 完結からそろそろ10年経つのに……。

『我らの告白』

 まず1作目。本編の収録は完結から2年後くらいに発表されたおまけ小冊子の初スクリプト化作品です。これも現品は入手していたんですが、何か怖くて結局読めないまま封印していたんですよね……。

 ベアトリーチェのゲーム盤製作過程の裏舞台を、ゲームマスター視点で詳らかに見せていく長めの短編。ある種の蛇足、という側面が強調されていて、本編の幻想性をスポイルする(でもそうすることで伝わるものもある)という内容でした。幸いにというか特に想定外の話が出てくることはなかったので、おおむね自分の理解や想像が的外れでなかったことを確認していくような内容でした。

 私にとってもっとも重要だったのはラストのベアトとドラノールの問答で、この一連のシーンを自分の目で見られてよかったです。「愛がなければ視えない」と謎かけするなら、問いかける側もまた答える側を愛さなければならない……という単純な話なんですが、この認識を作品の中で確かめられたことは私にとって長年のわだかまりに対する「解呪」のような効果がありましたね……(なんで今まで読まなかったの? って話ですね、はい……)。

『Last Note』

 タイトルが怖すぎる。実際は「これで本当に終わり! うみねこのなく頃に完全終了!」っていう内容でもなく、過去の作品で拾い残した要素に焦点を当てたスピンオフくらいの作品だったのでほっとしましたが……。

 謎解きの焦点になっていた「ピースの正体」自体は初期の段階で当たりがついたものの、それを確定させる手掛かりがうまく提示されてなかったように思うので、謎解きとしてはあまり上手くいってないと感じました(問答しながらヒントを絞っていく趣向にしても、決定的な手掛かりが出てくるのは相手がほぼ自白してるようなタイミングだったので……)。でも終盤で邪悪な魔女がいきなり本心を吐露し始め、キャラクターのイメージがバグったかのように多重化するくだり、こういうの有無を言わさぬ盛り上がりを味わいたくてうみねこを読んでたところも確かにあったなと思い出せて、よかったですね……。弱い……こういうのに弱い……。

 それにしても戦人、あそこまで言われて思い出さないの酷くないですか!? 「不甲斐なさと悔しさで、涙が止まらねえ……」じゃないんですよ、さっさと思い出してあげてください……。自分の記憶力のせいであれだけのことを引き起こしておいて、またこんな……。

 ほとんど10年ぶりのうみねこ新作だったのですが、驚くほど自分の中にスルッと入ってきてびっくりしました。大枠の仕掛けとか実験的な部分とかの小難しいところ抜きにしても、竜騎士さんの語り口や演出の手癖に対して私自身が馴染みすぎていることを思い知らされました……。いっそとことん最適化してしまった方が楽なんですが、無理なところはやっぱり無理で、それはまあ仕方ないとして、他の作家なら無表情に読み流せるような表現に心かき乱されたりするのが辛いんですよね……。悔しいですが、竜騎士さんに弱みを握られている……と改めて確認せざるを得ない数時間だったと言って過言ではありません。キコニアも……やるか……やる覚悟が固まってきました……。どうせWhenTheyCryからは逃れられないので……。