『マイ・フェア・レディ』

マイ・フェア・レディ 特別版 [DVD]

マイ・フェア・レディ 特別版 [DVD]

  • 発売日: 1999/10/14
  • メディア: DVD

 下町生まれの粗野な女を半年間の教育で立派なレディに仕立て上げられるかどうか、という最悪な「賭け」の対象にされた主人公が、嫌味な言語学の教授の指導によって立ち居振る舞いを変えられていく……という、まあいわゆるシンデレラストーリー。素直に見れば名作ロマンス映画という枠組みになると思うんですが、時代の移り変わりでかなり受け止め方の変わりそうな作品でしたね……。なんで私は年始の『パラサイト』直後に追い討ちをかけるようにしてこんな階級格差映画を観てるんですか?(犯人:おもち)

 登場人物の言動は基本的に当時の世相を反映したものだと思うんですが、そういうのをさっ引いても教授の言動は明らかにひどくて、学がなく訛りの強い主人公のことをもうずっとコケにしまくります。加えて、ロマンス要素の強くなる後半は限界まで捻くれた異常な男女観も教授の酷さに追い討ちをかけてきます。「どうして女は男のようにできないんだ」「どうしてこちらの気も知らずに」とか歌い出した挙句、主人公に逃げられたら母親に泣きついて「ママーッ!」とか言い出したりして本当に凄かった(本当にママーッて言ってた)。

 ただ、そういうのが「当時の感覚」で無批判に描かれてるわけではなくて、見る人が見れば明らかにろくでもない男だと分かるように描かれてるのが流石でしたね。というかこの男尊女卑モラハラ男の真に迫った描写、今の感覚で見てもぜんぜん色褪せた感じがしません。最後に主人公が教授のところに戻ってくるのは解せないし、手心という感じがしますが……。

 教授にはひたすら「ヒェ〜〜」言うてましたし、皮肉たっぷりの階級描写につらみを感じましたが、話運びは面白いし、ちょっと長めのミュージカルシーンも聴いていて楽しかったです。お父さんの登場シーンがいい意味で話の腰を折ってて好き。時代によって受け止め方の変わる部分があっても、それによってむしろ厚みが増してるのがすごくて、さすが息の長い名作だな〜〜という感想でした。