『低俗霊DAYDREAM(10)』

低俗霊daydream 10 (角川コミックス・エース 70-10)

 終わっちゃってました……。

 前巻ラストがYUO編クライマックスへの大きな引きだったので、この一冊まるまる使って最終章を描ききるんだと思い込んでたんですが、別にそんなことはありませんでしたのだ。YUO編は最初の100ページであっさり目にカタがついちゃって、その後はいつも通り新章突入。そしていくつか新しい伏線を出した後はまとめることなくブツ切りな感じでエンドマーク……と、どうにもわざと投げっぱなしエンドにするための体裁を整えたような感じです。

 YUO編をもうちょっと長くしてそこで完結させていれば物語としては綺麗にまとまっただろうな、とも思うんですが、実際にそうして欲しかったとはあまり思いません。もともとメリハリのある盛り上がりを描いてきたお話じゃありませんし、ようやく盛り上がってきたかなと思ったらいきなりフッと終わる作風が特徴でもありました。深小姫さんの戦いなのかなんなのかよく分からない人生はこの後もずっとだらだらと続いていくんだろうなーと思うと、この「開けた」終わり方に不思議な余韻を感じたりもするのでした。

 そもそもこの作品、頑張って読者の心を掴もう、頑張って読者に何かを伝えようっていうタイプのお話でもありません。なんか描きたいこと描いたらこんなん出ました、これどうよーって人に見せて、それを読者が思い思いになんとか読み取ろうとするお話だったと思うのです。登場人物の心理描写にしても、その動きを内側から描くというのではなく、彼らがそう行動する理由を外側から追ってく感じです。なので、「物語による意味づけ」をせずに最後まで淡々と出来事だけを描いていく形にしたのは、確かにこの作品に合った表現だったんだろうなあと思います。