『TENET』

Tenet

Tenet

  • 前半で伏線を撒いて、折り返しの「逆行」で時系列を逆に辿りながら伏線回収していくやつ
  • 逆行の物理法則、わからん!
  • 直前に『インセプション』観て構えてたけど、そういう意味でのツッコミ要素は意外となかった(序盤のスパイミッションはやっぱり大味すぎるけど……)(ニールが誘導したにしても、「金塊をバラ撒いておけば空港を爆破しても誰も注意を向けない」って言われて納得しないで)

 話題のTENET、観てきました。極力前情報を仕入れないようにしてたので、逆再生みたいなギミックがあるらしいのと、とにかく難解と言われてるらしいくらいの知識だけでスタート。たしかに「逆行」はかなりストレートな時間ギミックでありながらも独特で、過去作品のお約束をあまり参照できないという点で難易度の高い作品でした。

 逆行ギミックのややこしさは2つあって、まず単純にシナリオの時系列を混乱させること。ただしこれだけならループやタイムスリップの変化球とも言えるので、似たような趣向の他の作品と比べて特別難解と言うほどでもないかもしれません。問題は「逆行」が作用するシーンでは物理法則が実際に逆向きに描かれる点で、ここは相当混乱しました。単なる逆再生ではなく、「順行」と「逆行」が入り混じって衝突するわけ分からん光景に、文字通り脳の理解が追いつかない。理屈っぽいものを考えようにも序盤で「考えるな感じるんだ」みたいな釘の刺され方してるし、食事とか排泄、体内の状況とかどうなってるの? とか考え始めると絶対整合つかないはずので……まあ作品として適度に誤魔化してるんだろうなと割り切って、「作中設定」としてのギミックだけを追うことに努めましたが、それでも戦闘シーンで何が起こってるかは最後までよく分かりませんでしたね……(逆行以前にそもそも人物の見分けが絶望的にヘタクソなので、スタート地点にも立ってなかった気もしますが。赤さんチームも青さんチームも何も分からなかった……)。

 ともかく、時系列の難解さと逆行シーンそのものの難解さはちょっと別ものだと思うんですが、なにせこっちも混乱してるので「逆行……分からん!」になって、ついてくのに必死でした。幸い逆行ギミックが本格的に動き出すのは物語後半(時間の尺的には2/3以降?)なのですが、そもそもそこに辿り着くまでのスパイアクション展開にも時間ギミックとは別種のハイコンテクストなややこしさがあるので、結局終始難解でしたね……。後半で回収される謎の伏線を見て「このシーンの意味分かってないの私だけ??」ってなったり。

 まあ、本格的に逆行が始まってからは派手なバトルの連続なので、目の前で何が起きてるかは分からなくても話の筋自体は分かりやすいといえば分かりやすくなりました(誰が敵で誰が味方、くらいの雑な粒度まで視点を引いたらそりゃ迷わんわという話かもしれませんが)。そもそも話の構造上、「逆行」以降は時系列を逆に辿って謎を回収していくパートに入るので、その意味でも伏線を撒いていく一方だった前半の方が初見時の難解度は高かったかもしれません。なので、前半のスパイパートで混乱して伏線取りこぼすと、後半いよいよ何も分からなくなるというのはありそう。私も前半部分の伏線は相当見落としてたと思うので、できればもう一度……という気持ちがどうしても湧いてきますね。このご時世、なかなか難しいことではありますが……。