メギド72「そして灯火は静かに消える」

https://megido72-portal.com/ev/20210331

 背を向けるようなマスティモのポーズに続き、自身の身体(と燭台(?))を真横から見せるデザインのウコバク。一枚絵の中の物語性が強いし、影絵に映えるからイベントのテーマにもマッチする良いデザインでしたね。

 メギドとヴィータの感情には依然よくわからないところが多いですが、今回はそこに踏み込んだシナリオだったように思います。基本的に「力こそ全て」になりがちなメギドの価値観には文化や情の要素が薄く、一方のヴィータには多様な文化や不合理な感情を尊ぶ気風がある。これだけなら話は単純ですが、メギドには「個」という重要な核があり、「個」が規定する強い個性の前では凡百のヴィータはむしろ無個性な群衆として描写されがちです。

「メギドの画一性とヴィータの多様性」を強調するか、「メギドの奇抜さとヴィータの凡庸さ」を強調するかは話の都合でどっちに転ぶこともあるので、割り切った構図で捉えるのは難しいところがありました。恋愛は基本的にヴィータ的な感情だけど、特定の対象に異常な執着を抱くのはむしろメギド味が強いみたいな。このねじれに加えて「ヴィータ体を取ったメギドはヴィータに寄る」みたいな話もあるので、メギドとヴィータの感情の決定的な差異がどこにあるかという話題はこれまで結構煙に巻かれがちだったと思います。

 でも今回、「どちら由来の感情か分からない」ボーダーな事例がかなりはっきり示されたことで、構図としてはかえって整理された感がありますね。それに並行して、「ヴィータ的感情でありながらヴィータ社会で忌避されているねじくれた概念であるところの近親恋愛の概念をスッと挿し込んで、特に具体的な言及をすることなく読者それぞれの認識に合わせた「察し」を発生させてるところも上手かっだと思います(それを単純に「メギドの非倫理性」と捉えるか、「時に不当な道徳観念に囚われるヴィータと、その先入観から自由なメギド」と捉えるかが読み手に委ねられている)。

 その一方で「自分にはヴィータ的な感情が本当のところは分からない」とか言ってるフォラスが最後ああいうベタな着地になるのもいい対比でした。「NTRヴィータ的感情」って理屈としては意味がわかりませんが、なんか納得してしまう説得力がありましたよね……。