『ひぐらしのなく頃に 祟殺し編』まとめ(再プレイ7)

ぐぇー。ぐぇぐぇぐぇぐぇぐぇー。
初プレイ時はあまりにも混乱してしまってこんなことしか書けなかったんですけれど、舞台裏まで知り尽くした今回のプレイではさすがに少し余裕を持って眺めることができました。でも、後編のテーマまでふまえて感想を書こうとすると、ただでさえ難しいネタばれ回避の遠まわし表現がますます増えてわけ分からなくなりますね。この記事、分かりにくかったらごめんなさい。
この祟殺し編は、ひぐらし全編の中でも異質なシナリオであるとよく言われていました。単純なホラーではなく、一種社会的な問題に焦点が移ったこともそう言われるひとつの要因でしょう。そのことを指して、この種の問題に安易に手を出すのは少々あざといのではないか、という意見もちらほら耳にしたものです。ところが解決編の内容までを含めて振り返ると、ここで提示された問題がひぐらし全編の中で決して特殊なものではなく、むしろ物語全体を貫くテーマのひとつと密接に関わっていることが分かるでしょう。この問題に対する解は解決編のあるシナリオで示されますけれど、ともすればセカイ系的な短絡に向かいがちなこのジャンル界隈でああいう解決の仕方を大真面目に提示した例は、私の知る限り他にありません。この点、一度社会に出て広い視野を得る機会のあった竜騎士07さんの地に足のついた経験が窺えると思います。
それにしても、再プレイの視点から見て改めて思うのは、よくこんな無茶苦茶なお話を書き上げることができたものだなあということ。鬼隠し編綿流し編は、まだ「よくできたサウンドノベル*1でした。ところがこの祟殺し編は、そういう評価軸をひとつ踏み越えてしまっています。このお話を読み終えたときに得られる感想は、「面白いなあ」という感動ではなくて「わけが分からない」という混乱なのです。特に物語の後半は、本当に斜め上の展開が続きます。たとえお話の中で提示されるあらゆるオカルト仮説を肯定したところで、つまり「全部祟りでした」とか「全部超常現象でした」と開き直りをしてさえも、この不整合には説明がつきません。そういう意味で、祟殺し編は『ドグラ・マグラ』とか『夏と冬の奏鳴曲』とか、性質としてはそっちの方向性に近い作品だと言っていいでしょう*2。この作品が与えてくるのは、自分の理解のキャパシティを超えているのではないかという不安、またはその錯覚です。

序盤の幸せな数日間を除けば、この作品は全編が陰鬱な心理描写に満たされています。起こるのはさらなる悲痛な出来事だけで、物語的なカタルシスはありません。物語作法的に考えて、こんなお話のリーダビリティが高いわけがないんです。にも関わらず、この作品をプレイした多くの人が短時間で一気にプレイしています。なぜ読み進めるのをやめられないのかと言えば、きっと主人公の努力の先に何らかの救いがあるのではないかと期待してしまうからなのでしょう。ほとんどその希望だけが読者の目を作品に繋ぎとめ、けれども非常に強い牽引力でラストシーンまで一気に引っ張っていきます。辛くて辛くてこれ以上読みたくない、でもここで読み終わるわけには行かないと。なんかもう、この編に限ってはエンターテイメントですらない気がしました。

*1:というには瑕疵も多いですけれど

*2:ただし例に挙げた作品と違って、解決編で明かされる真相によって最終的に整合性はつくんですけど