『四季 秋』

四季 秋 (講談社文庫)

過去を描いていた『夏』から時間は一気に跳躍し、遂に「その後」が描かれます。お話の視点は四季さんから離れ、シリーズお馴染みのあの人たちへ。

ああもう至福。これまでの森さんの集大成とすらいえる作品でしょう。あと一冊で終わってしまうのがとにかく残念でなりません。もし終わりさえしないのなら、ずっと読んでいたいくらいです。

お話の視点が四季さんを離れることで、彼女の存在感はますます強くなってきました。「人間は成長することで弱くなる」というのは森さんが作品に込める主張のひとつですけれど、登場人物がその摂理に沿った変化をしていく中で、ただ一人四季さんだけは今だ一向に衰えを見せません。

このままだと、四季さんは人類のグレートマザーにでもなってしまいそうな勢いですね。もはやジャンルをほとんど超越してしまった、「小説」という表現の傑作だと思います。