『昴(5)』

昴 (5) (ビッグコミックス)

 一冊短すぎ。集中力のない私はご本を読んでるときもしょっちゅう「あと何ページくらい残ってるのかな」とか確認してしまうんですけれど、本書ではそれが一度もありませんでした。気が付いたら最後のページになってしまったという、まさに一気読み。そのくらい本書はまるまる一冊が緊迫感に包まれていて、第一部の最後の所にふさわしい内容でした。

 それにしても、作中でそういわれている通りすばるさんは早死にしそうな雰囲気がぷんぷんしますね。圧倒的すぎるその才能に反比例して、それ以外の部分が脆すぎる……という天才像自体はよくあるものかもしれませんけど、彼女はまさにその道を正面から突っ走っています。

 ロイヤル・バレエ・スクールからの優遇条件をよく聞きもせず蹴ったり、そうかと思えば「賞にもれた人のためにも、スカラシップをとった人は、ちゃんと使わなければいけない」なんて逆のようなことを言ったり。

 意識のレベルでは「バレエ以外のことはどうだっていい」という感じでなく、むしろ愚直な生真面目さすらあるんですけど、周囲の状況に対しての考えが足りてなくて結果として迷走してしまっているような節もあります。

 彼女が全信頼をもって判断を委ねられるような人が、マネージャー的なことも含めたバックアップに回ってくれるようなことがあればまた事情も変わってくるでしょう。でも思い違いやら何やらで自分からそういう人を遠ざけているような節もあり、なかなか上手くはいかないのでしょう。

 そしてカティアさんの当て馬っぷり……。